2023-04-14 政治・国際

米国、フィリピン両軍が過去最大の軍事演習 台湾海峡、南シナ海の有事に備え中国に対抗

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注目ポイント

フィリピン軍は首都マニラのアギナルド基地で今週、米軍との定期合同演習「バリカタン」の開始式典を開いた。今年は両軍の兵員約1万7600人が参加し、過去最大規模となる。南シナ海に進出する中国との緊張が高まる中、同盟を強化する狙いだ。演習はフィリピン周辺で28日まで行われ、26日には領海内で初の海上実弾演習を実施し、老朽艦を撃沈させる。

米国とフィリピンの両政府は今週、ワシントンで外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)を開き、インド太平洋地域で軍事的に台頭する中国をにらんだ防衛協力の拡大を進める方針を確認し、一層の同盟強化を図った。ブリンケン米国務長官は、南シナ海での「いかなる脅しにも反対する」と述べ、中国の脅迫に屈しない姿勢を強調した。

米国とフィリピンの2プラス2は2016年1月以来、約7年ぶりに開催された。終了後の共同記者会見でブリンケン氏は、経済協力や災害対策など幅広い分野でも連携を広げることで一致したと強調。フィリピンのマナロ外相は「法に基づく国際秩序の維持へ、より強い役割を果たす」と表明した。

そんな中、フィリピン軍は首都マニラのアギナルド基地で11日、米軍との定期合同演習「バリカタン」の開始式典を開いた。「バリカタン」とはタガログ語で「肩を並べる」を意味する。昨年は両軍で約8900人が参加したが、今年は、米軍約1万2200人、フィリピン軍5400人、オーストラリア軍111人の合計1万7700人以上の兵員が参加。これは30年前にバリカタンが始まって以来最大規模だ。日本の自衛隊もオブザーバー参加する。

ルソン島西部サンバレス州沖のフィリピン領海内では、26日に初の海上実弾演習を行い、老朽艦に高機動ロケット砲システム「ハイマース」などで陸海空から多重攻撃を加えて撃沈させる。

オースティン米海兵隊少将は、「これらの演習により、紛争、危機管理、人道支援、災害救援などに迅速に対応できるようになる」とし、軍事面だけではなく、多面的な両国の協力関係の強化につながるとの見方を示した。

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会見に臨むオースティン米海兵隊少将とフィリピン軍のマービン・リクディン比陸軍少将

フィリピン軍のロジコ報道官は、26日に実施される初の実弾射撃演習について記者団に、「海からの敵の侵入を想定し、実際に予想されるものに近い目標に向けて実弾演習をする必要がある」と説明。「われわれの準備はできている」と付け加えた。

中国が自国の領土とみなす海域近くでのロケット弾発射により中国を刺激することを想定したかと聞かれたロジコ報道官は、マルコス大統領に実弾演習についてのブリーフィングをした際、そういった懸念は出てこなかったと説明。マルコス氏は海上実弾演習の視察に前向きな反応を示したと述べた。

米ABCニュースによると、マルコス大統領は米国との共同軍事演習を強化し、2014年の米比防衛協定に基づき、新たに4つの軍事拠点で米軍に駐留を許可することに合意した。中国が事実上全面的に主張する南シナ海における自国の領有権を守ろうとするフィリピン政府の取り組みの一環だ。

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