2023-04-13 経済

スイス2大銀行の統合に必要なものは

注目ポイント

スイス金融大手UBSによるライバル行クレディ・スイスの買収価格はわずか30億フラン(約4300億円)。書類上はUBSが大儲けしたように見えるが、これが安物買いの銭失いとなるかは、統合完了後まで分からない。

UBSがクレディ・スイスを買収することで合意したが、問題はこれからだ © Keystone / Georgios Kefalas

リスク

2つのオペレーションシステムの統合、問題の多いクレディ・スイスの投資銀行部門の立て直し、従業員と企業文化の統合。UBSは考えられる難題としてこの3点を挙げる。

「クレディ・スイスの一部に悪い文化があったのは明らかだ。我々のエコシステムに問題を起こす要素を持ち込まないように徹底するため、全員を文化的フィルターにかける必要がある」

合併が完了するまでは、UBSクレディ・スイスの財務状況を全て把握できるわけではない。

「合併していない間は、全ての情報にアクセスすることはできない。反トラスト規制には十分に注意しなければならない」。今月4日までUBSの最高経営責任者(CEO)を務めていたラルフ・ハマーズ氏は、買収決定後にこう語った。

また、銀行不安と金利上昇で市場が揺れる中、UBSが強制されたクレディ・スイス買収でいくら得られるのか、という疑問もある。

元UBS幹部で現在はリスク管理コンサルタント会社「Orbit36」のマネージングパートナーを務めるアンドレアス・イタ氏は、基本的な業務レベルで考慮すべき点が多数あると指摘する。「両企業は異なるITシステムで業務を行っている。この分野の統合は数四半期どころか何年もかかるだろう」

イタ氏は「UBSはクレディ・スイスの様々な係争中の訴訟も引き継ぐことになる」点も注視する。買収の際に無価値化されたいわゆるAT1債保有者が訴訟を起こすリスクもその代表格だ。

クレディ・スイスの筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクをなだめるのもUBSの仕事だ。サウジ・ナショナル・バンクは昨年クレディ・スイスに莫大な投資をしたが、UBSによる買収で大損を食らった。

政治

好むと好まざるとに関わらず、UBSは現在スイスの政治の渦に巻き込まれている。

スイス政府は買収を成立させるために緊急事態条項を発動し、株主や債権者を蚊帳の外に追いやった。さらにUBSに損失が生じた場合に数十億フランを税金で保証すると約束した。

また政府はクレディ・スイスのボーナスの支払い停止を命じた。国会は11日に始まった臨時議会でこの件を審議する予定だが、複数の委員会が銀行の緊急措置について調査することを約束した。

クレディ・スイスの国内小口銀行業務を独立させるよう要求する政治家は多い。UBSはクレディ・スイスの分社化は予定していないと述べているため、政治家と銀行側が衝突する可能性がある。

スイスで勤務するクレディ・スイスの従業員1万6千人の人員削減は避けられない。UBSは現時点でこのうち何人が職を失うのかは言及できないとしているが、できるだけ多くの雇用を守るよう迫られるだろう。

今後の展開

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