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マクロン仏大統領による台湾に関する発言に、游錫堃(ゆう・しゃくこん)台湾の立法院院長は、「『自由、平等、友愛』というフランスの建国理想は、今や時代遅れになったのか」と皮肉交じりにそう反応した。「欧州は米中いずれにも追随すべきでない」としたマクロン氏の発言は欧米でも波紋を広げ、「欧州と米国の同盟関係を台無しにした」(チェコの上院議員)などと批判を集めている。
ロイター通信によると、対中政策について欧州の結束を示すはずのマクロン仏大統領の訪中だったが、同氏は現地でのフランスメディアとのインタビューで、「最悪なのは、アメリカのリズムや中国の過剰反応に追随しなければいけないと考えることだ」と発言し、台湾有事に引きずり込まれないように警告した。
マクロン氏はまた、欧州連合(EU)が米国への依存を減らし、米中と並んで世界の「第3極」を目指すよう訴えた。
游院長は12日、このマクロン氏の発言に反応し、フェイスブックで「『リベルテ、エガリテ、フラタニテ』は時代遅れになったのでしょうか?」と投稿し、「自由、平等、博愛」というフランスの建国理念に言及した。
游氏は、「これが憲法の一部になったから、もう無視すればいいのでしょうか。それとも先進民主主義国家は他国の人びとの生死を無視できるのでしょうか?」 とし、「世界の民主主義をリードするマクロン大統領の行動に困惑せざるを得ない」と付け加えた。
ほとんどの国と同様、フランスも台湾と正式な外交関係を持っていないが、台北に事実上の大使館を置き、台湾海峡の平和の必要性を強調するため、米国の同盟諸国に加わっている。
台湾外交部の劉永健報道官は11日、マクロン氏の発言内容については「留意する」と言及するにとどめた。ただ、「台湾海峡の平和と安定に関する懸念を、さまざまな国際的な場で何度も表明してくれたフランスに謝意を示す」とし、先日の仏英首脳会談を例に挙げた。その上で同報道官は、「これはフランスの一貫したスタンスと立場の継続だ」と述べた。
だが、「欧州は米中いずれにも追随すべきでない」とするマクロン氏の発言は、欧米から強い批判を招いている。中国が大規模演習で台湾を威嚇する中、米中両国に対して不適切なメッセージとなるとして、自国内でも「失策」(フィガロ紙)と指摘されているのだ。また、チェコの上院議員は、「欧州と米国の同盟関係を台無しにした」と強く批判した。
インタビューは訪中の間の7日、フランス紙などを相手に行われ、中国が蔡英文総統の訪米などへの対抗措置として軍事演習を始めた後の9日報じられた。マクロン氏は台湾情勢の急変は、欧州諸国の利益にならないとも訴えた。
欧州に戻ったマクロン氏は12日、オランダの首都アムステルダムで開かれたルッテ首相との共同会見を開いた。席上、この発言をめぐってマクロン氏に質問が集中。同氏は台湾問題について、「現状維持を支持する」という発言を繰り返し、フランスの立場に変化がないことを強調。その上で、「同盟は属国であることを意味しない」とし、独自路線を取る考えを示唆した。