注目ポイント
ここ数週間でネット上に流出したとされる米国防総省(ペンタゴン)の機密文書は、米国が同盟・友好諸国や敵国など両側に対し、同様の諜報活動を仕掛けてきたことを露呈する結果となったと米CNNは指摘した。これにより機密情報源を危険にさらすことになり、「重要な対外関係を危うくするとして米国当局者を激しく動揺させている」と伝えた。一方、元ペンタゴン高官は米国人の関与を示唆した。
米CNNは、米国当局者が本物であるとする文書の一部は、韓国、イスラエル、ウクライナを含む主要同盟国や友好国に対する米国による諜報活動を暴露したと報じた。一方、ロシア国防省とロシアの民間傭兵会社ワグネル・グループに侵入して入手した情報も明らかなったとした。だが、その主な手段は通信傍受と人的情報源であり、現在はすでに遮断されているか、情報源が危険にさらされている可能性があるとの懸念を示した。
さらに、戦局の重要な時点で、米国とウクライナが相互信頼のもと、情報共有が進む中、ウクライナ軍の武器や防空能力のぜい弱さなど、ロシア軍への反撃体制を整える上での弱点となる重要情報も漏洩した。そのため、ウクライナ軍は作戦の変更を余儀なくされたと同国のゼレンスキー大統領に近い関係者はCNNに語った。
ただ、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、戦略は不変だと強調し、具体的な戦術は常に修正される可能性があるとも述べた。
ロイター通信によると、米政府の当局者らは流出元の特定を急いでおり、専門家や米当局者の間には米国人が関与したとの見方がある。当局者らによると、漏えいした文書がウクライナでの戦争や中国、中東、アフリカなど幅広い内容を網羅していることが、同盟国ではなく米国の人物がリークした可能性を示唆しているという。
元ペンタゴン高官のマイケル・マルロイ氏はロイター通信に対し、「文書の多くは米国のみが管理していたため、焦点は米国によるリークかどうか」と語った。ただ、当局者らによると、調査は初期段階にあり、親ロシア派が関与した可能性も排除していないという。
文書漏えいが判明して以来、ロイター通信は「ディスコード」、「4チャン」など、SNSで先月以来公開された「機密」あるいは「極秘」と記された50件以上の文書を精査した。文書の一部は何週間も前に投稿されていたが、その存在は7日に米紙ニューヨーク・タイムズが初めて報じた。同紙は、流出文書は100件以上とみられ、米政府当局者は重大な損害となる恐れがあるとみていると伝えていた。
タイムズ紙はまた、米当局が韓国政府内の通信を傍受していることを示す文書も流出したと報道。韓国大統領府は9日、「米側と必要な協議を行う」と表明した。文書には、ロシアの侵攻を受けるウクライナを支援する米国に、韓国が砲弾を売却することをめぐる韓国政府高官らの発言が記されている。
韓国は「ウクライナに殺傷兵器を提供しない」との方針を堅持し、米国の不足分を補う形で砲弾を輸出した。文書には尹錫悦大統領がバイデン大統領から電話を受け、兵器供与に関し圧力をかけられることを危惧していたことが記されていた。