2021-12-03 ライフ

ヤングケアラーをケアするのは誰? ——日台ヤングケアラーの現状—— 前編

「ヤングケアラー」はNHKが長期に渡って取材し特集を組むほど(注1)、ここ数年よくクローズアップされるキーワードの一つである。

 

厚生労働省によると、法令上の定義はないが「一般に、本来大人が担うと想定される家事や家族の世話などを日常的に行っている子ども」とされており(注2)、貧困や片親などといった家庭環境と絡めてイメージされることが多い。

 

しかしながら、病気や不慮の事故で家族が急に倒れ、子どもが否応なしにヤングケアラーになる事例はたくさんある。ある日突然、誰の身にも起こりうることなのである。

 

実際に、文部科学省が中高生を対象に行った調査によると、中学生の17人に1人(5.7%)、高校生の24人に1人(4.1%)が「世話をしている家族がいる」と答えている(注3)。介護の話となると、家族内で世話をすることの大変さが頻繁に取り上げられる。世間からは、家族だから家事の手伝いや世話をするのは当たり前だと思われ、本人も毎日休みなく頑張ろうとして、つい限度を超えるまでの負担を抱え込んでしまう。ヤングケアラーの場合はさらに「子ども」であるがゆえに、複雑な難局に立たされることになる。

 

「お手伝い」の範疇をはるかに超えて、炊事や洗濯などの家事を日々こなし、病気や障がいのある大人の介護や小さな弟妹の世話、そして保育園などへの送迎もする。時には家計を支えるためにアルバイトもするなど、ヤングケアラーは、家族のトラブルに対応するため、自らの体力や精神を削り、学校生活や人間関係を犠牲にしてしまう傾向がある。

 

前述の調査によると、これらの世話に費やす時間は中学生で1日4時間、高校生は3.8時間とのこと。その中で、1日に7時間以上も費やす生徒が全体の1割を超えているという。その結果、勉強や睡眠、友達との時間が取れないのは致し方ないことでもある。

 

しかし、子どもらしい生活を送れないことは、その後の人生に多大な影響を及ぼしてしまう。にもかかわらず、当事者である子どもにとっては、その状態が当たり前の日常であり、問題として認識できていないため、誰に助けを求めたらいいのか、そもそも助けを求めていいものかどうかも分からない。

 

周囲の人たちにとっても、虐待のようにすぐに命にかかわるケースではないため、子どもが悩みを抱え、その人生を家族に捧げてしまっていることを認識しづらい現状がある。

 

核家族化が進んだ現代社会において、「家族」のことは家族内で解決すべきという考えが一般的な社会通念であることも、ヤングケアラーの存在を顕在化させにくい原因となっている。特に儒家の「家」を中心とした思想が強く反映している東アジアでは、家の中のことはなかなか表面化しにくく、支援の手を差し伸べることを一層困難にしている。

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