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1985年の大噴火で少なくとも2万5000人が犠牲になるという、西半球で歴史上最大級の災害を引き起こした南米コロンビアのネバドデルルイス火山が、再び活発化の兆候を示しているという。コロンビア政府は警戒レベルを引き上げ、危険区域の住民の避難を勧告した。
地元で「眠れる獅子」と呼ばれるネバドデルルイス火山(標高5321メートル)は、コロンビアの首都ボゴタの西約130キロ、アンデス山脈の中に位置する活火山。同国の地質調査所によると、2万5000人以上が犠牲になった1985年の壊滅的噴火以来みられなかった高い頻度の群発地震が観測され、政府は警戒レベルを4段階で2番目に高いオレンジに引き上げた。
米スミソニアン協会による世界の活火山や火山活動を記録・監視するプロジェクト「グローバル・ボルカニズム・プログラム」の最新情報によると、3月30日には最大で1日に約1万1600回の地震が報告されるなど、連日異常な回数の地震を観測。先週の1日平均は6000回だった。同協会は、地下の流体の動きが火山灰の排出量の増加の原因である可能性が高いとしている。
コロンビア地質調査所(CGS)は「地震の回数だけが火山活動の指標ではない」と指摘。9日には地震の回数が減少に転じたという。
火山近くには約5万7000人が住んでおり、1985年11月13日の爆発的噴火の後、人口は増え続けている。「アルメロの悲劇」と呼ばれるその大噴火により、同国トリマ県アルメロでは当時の人口約2万8700人のうち、8割にあたる2万3000人が死亡した。
米地質調査所(USGS)によると、当時の噴火では、数分のうちに町の住民のほとんどが命を奪われ、植生、建物を含む全てが泥流に流され、コンクリートのような混合物の中に埋まった。ところが、実際には噴火による火山泥流(ラハール)がアルメロに達するまで約2時間の猶予があった。にもかかわらず警報が遅れた。USGSは、もっと早く通知されていれば、住民が高台に避難するのに十分な時間があったとしている。
今回の警戒レベルの引き上げに伴い、コロンビアのペトロ大統領は、危険度が高い地域の住民に避難を促し、85年の教訓を生かすため、当局に対応を早めるよう要請した。「ネバドデルルイス火山の噴火という不測の事態で、高いリスクにさらされている2500世帯の予防的避難を加速させるよう担当当局に申し入れた」との声明を発表したのだ。
だが、一部の住民は避難勧告に応じていない。というのも、85年の大噴火以降、これまで18回にわたりオレンジ警報が発令されたが、大規模な噴火にはつながらなかったからだ。
85年の噴火で妻と5人の子供たちと無事生き残ったジャガイモ農家のエヴェリオ・オルティスさんは、「もう一度大噴火したので怖くはない」とし、「(火山泥流に)飲み込まれたところは、すでに飲み込まれた」とロイター通信に語った。