注目ポイント
セリが行われ仲卸が集まる花市場と、市場から仕入れた花を店頭で販売する花屋。「花を取り扱う」といってもこの二つは似て非なるものだが、台湾ではその違いが曖昧だという。台北で花屋を営む日本人店主が遭遇した、台湾らしいエピソードとは?
日本人であれば、花屋と花市場は全く違った業種であることをご存知だろう。だが、台湾の場合、花屋と花市場はどこが違うのか、一般の人はあまり理解していないように思う。今回は、花屋と花市場の違いが曖昧だからこそ起こるエピソードをご紹介する。
お得な花市場の落とし穴
日本の花市場は、花屋として登録していないと仲卸で購入することができなかったり、購入できたとしても一般人と花屋では価格差があったりするが、台湾の場合は一般人でも購入でき、花屋と一般人で仲卸からの購入価格が同じ場合も多々ある。
そのため、一般人でも市場に行って購入した方が明らかにお得ではあるが、市場で花を購入する場合、一束が20本単位などと多く、棘や下葉処理も全て自分でしなければならない。ところが、一般人の多くはそういった処理の手間を知らないため、値段だけを見て「市場で購入した方がお得」だと思っている人が多い。
花屋に花を持ち込むお客様
私が台北で営む店でも、お客様が自ら市場で購入した花を持ち込んできて、「花束やアレンジを作ってほしい」と依頼されることがある。その際、自宅用であれば製作費用だけ少しいただいて対応することもあるが、贈り物の場合には断るようにしている。
なぜなら、お客様が持ち込まれる花の大半は安い花で、当店では扱わないような等級のものばかりだからだ。中には品質の悪い花や、古くて腐っている花を売りつけられているケースもある。花の目利きができない人を利用する悪徳な仲卸もいるのだ。
こうした花で花束を作っても、それを受け取る側にとっては「当店が作った花束」。すぐに枯れてしまったり、腐った状態で届けられては店の信用に影響してくるので、贈り物目的での花の持ち込みは断っているのだ。

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花屋でできること、市場でできること
先ほども申し上げた通り、市場では一般人でも20本単位などでしか購入できない。もちろん、赤バラ一束(20本入)とかすみ草一束(5本入)を購入すればそれだけで花束が完成するし、花束を制作するサービスを行っている仲卸もある。スタンド花、胡蝶蘭、観葉植物などのギフト配送も一応は対応しているため、コストを抑えることに重点を置くのであれば、市場を利用してみるのも一興だろう。
ただし、仲卸には限られた包装紙やリボンしかなく、誰もがフラワーデザイナーというわけではない。デザイン性や技術を重視し、おしゃれな花束や洗練されたデザイン、メッセージカードや袋などにもこだわりたいのであれば、やはり花屋でオーダーする方が無難である。