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中国軍による台湾を取り囲む形での軍事演習は10日、3日間の日程を終了した。中国軍は戦闘機や駆逐艦が演習する映像を公開し、戦力を誇示。米国との関係を強化する台湾の蔡英文政権に圧力を加えた。9日には台湾海峡で中国、台湾それぞれの艦船約10隻ずつがにらみ合ったと伝えられる。
台湾国防部(国防省)は9日、中国軍が軍用機延べ58機、艦船延べ9隻を台湾海峡周辺で活動させたと発表。うち31機が台湾海峡の暗黙の「休戦ライン」中間線を越えたり、南西の防空識別圏に進入。8日には台湾海峡と台湾の北部と南部、東部の海空域で、軍用機延べ71機と艦船延べ9隻が台湾海峡周辺で活動。うち延べ45機が「休戦ライン」中間線を越えたり南西の防空識別圏に進入したりした。
中国軍東部戦区の報道官は台湾周辺での軍事演習について、蔡総統が米国でマッカーシー米下院議長と会談したことへの対抗措置で、「台湾独立分裂勢力と外部勢力による挑発への警告だ」とし、「国家主権と領土の一体性を守るために必要な行動だ」と強調。
同東部戦区は、複数の部隊が連携して「台湾と周辺海域の重要な目標を正確に攻撃する」シミュレーションを実施したと発表。環球時報は、2019年に就役した中国初の国産空母「山東」が参加し、「重要な役割を果たした」との軍事専門家の分析を報じた。
中国で台湾政策を主管する国務院(政府)台湾事務弁公室は、今回の蔡氏の米国滞在を「台湾独立を狙う挑発行為」と非難し、蔡氏がマッカーシー氏と接触すれば「台湾海峡の平和と安定を壊すことになる。必ず反撃を行う」と警告していた。中国は昨年8月、ペロシ米下院議長(当時)が訪台した際、台湾を取り囲んで軍事演習を行い、日本の排他的経済水域(EEZ)に弾道ミサイルを撃ち込んだ。
一方、台湾国防部は中国軍の演習などを厳しく批判し、「中国は蔡総統の米国立ち寄りを演習の口実にしている」と指摘した。
また、台湾外交部(外務省)は7日、中国が蔡氏の訪米などへの対抗措置として、台北駐米経済文化代表処の蕭美琴代表らに制裁を科したことに対し、「わが国の元首が外交活動を行うことは主権国家の基本的権利だ。中国に口を挟む権利はない」との声明を発表、反発した。
外交部は「中国の過度な反応は台湾人の反感を深めるだけでなく、共産党政権の不合理な性質をさらけだすものだ」と指摘した。
そんな中、中米2か国を歴訪し、ロサンゼルス近郊でマッカーシー氏と会談した蔡氏は、7日に専用機で台湾に帰着。中国共産党に事実上招かれて訪中していた最大野党、国民党の馬英九前総統も同日午後、台湾に戻った。米中対立の激化を背景に、来年1月の総統選に向けた現前総統との闘いも激しさを増しそうだ。
蔡氏は北部・桃園国際空港に到着後「米国の超党派の議員が台湾支持を表明した。民主主義パートナーとの友情はさらに固くなった」と成果を強調した。