注目ポイント
スイスの倉庫には、未使用の新型コロナウイルスのワクチンが山積みになっている。在庫は今後も膨らみ続ける様相だ。需要の低迷に加え、発展途上国への寄付は複雑な手続きが必要なため、期限切れワクチンが大量に廃棄されている。
中央党(Die Mitte/Le Centre)のぺーター・ヘグリン上院議員は、新型コロナワクチン調達予算の削減を訴える1人だ。「スイスが必要量の何倍ものワクチンを調達しているのは、比較的早くから分かっていた」とドイツ語圏の地域紙アールガウアー・ツァイトゥングに語る。「そのため、もっと早く購入を中止するか、少なくとも減らすべきだった」
これに対しBAGのミン氏は、「発注当初は、まだパンデミックの進展を予測するのが難しかった」と反論する。そして今年以降、BAGには新型コロナワクチンについて契約で取り決められた義務がなくなる点を強調した。
無駄になったワクチン
新型コロナワクチンには有効期限があり、BAGによると納品から「少なくとも6カ月以内」に廃棄しなければならない。そのため当局は、かつて貴重品だったワクチンの処分を余儀なくされている。
連邦・州当局は、これまでに340万回分のワクチンを廃棄した。更に590万回分は、スイス政府の所有物としてベルギーの倉庫に保管され、第三国への譲渡が予定されていた。だが新型コロナウイルスのワクチンを共同購入し途上国などに分配する国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」で譲渡する計画が頓挫したため、昨年秋に有効期限を迎えた時点で、これらのワクチンも現地で廃棄処分された。その後、倉庫は閉鎖された。
BAGによると、現在の備蓄の180万回分が(有効期限が延長されない限り)5月末までに期限切れになる。これまでに無駄になったワクチンの総額は、試算では少なくとも2億7千万フラン(約388億円)に上る。
これは富裕国によくある問題だ。英国の医療系調査会社エアフィニティ他のサイトへの調査によると、国民1人当たりに注文した新型コロナワクチンの回数で、スイスはカナダ、オーストラリアに次ぐ3位だった。僅差で英国と欧州連合(EU)が続く。ワクチン廃棄に関する国別の詳細はないが、エアフィニティの推定では、2020年末にワクチン接種が始まって以来、世界で合計14億回分のワクチンが無駄になった可能性があるという。
ワクチンの寄付
スイス連邦政府にも、未使用のワクチンを利用するための戦略はある。昨年2月、政府はスイス国民に3400万回分のワクチンを手配したと発表他のサイトへし、余剰分は最大1500万回分をコバックスに寄付するとした。この取り決めは現在も有効だ。また昨年12月の発表他のサイトへでは、2023年内にスイスで使用されなかったワクチンは、最大1300万回分を転売または譲渡するとした。