2023-04-07 政治・国際

【樫山幸夫の一刀両断】各国が注視した蔡英文総統と米下院議長の会談 台湾の存在感増大を証明

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注目ポイント

蔡英文総統と会談したマッカーシー米下院議長(共和党)は、「ゆるぎない支援」を表明した。台湾の総統の立ち寄りに制限を科していた米国は、中国が台頭し始めた2000年代に入ってから歓迎の方針に転じた。台湾の国際的な重要さが、それにあわせて増してきたためだ。米国だけでなく日本、欧州も関係強化を進めている。中国は存在を誇示すれば、それだけ台湾の影響力増大を許す結果になる。

台湾の存在がこれほどまで重みを増した時期はかつてなかったろう。

蔡英文総統の米国立ち寄りと馬英九前総統の大陸訪問が重なったとか、台湾と外交関係を持つ国が過去最少となったなどだけではない。

中国の脅威増大と軌を一にして、米国、欧州からの要人訪問、武器供与が急増、バイデン政権は台湾有事における介入の意思を明確にし、日本も、かつての慎重さをかなぐり捨て始めている。

蔡英文総統のトランジットが脚光を浴びるのは、そうした台湾の重みが増したことの象徴というべきだろう。

強大な軍事力で存在を誇示すればするほど、台湾の存在感を高めてしまうー。中国はジレンマに悩みつづけるだろう。

 

隔世の感ある蔡英文総統への厚遇ぶり

蔡英文総統がベリーズ、グアテマラ訪問を終えて4月4日、ロサンゼルスのホテルに到着した模様は日本のテレビでも放映されたが、多くの市民が大歓迎。歴訪前、ニューヨークに到着した際も同様だった。

立ち寄りに反対する人たちも少なくなかったが、小旗が打ち振られる光景は、あたかも国賓を迎えるような雰囲気だった。

ロス郊外、ロナルドレーガン大統領図書館で4月5日に行われた蔡ーマッカーシー会談で議長は、「台湾に対する揺るぎない支援は超党派であり強固だ」と述べ、今後も強い連携維持を強調。

総統は「われわれが築いてきた平和と民主主義はかつてない挑戦にさらされている。自由の灯火を輝かせ続けなければならない」と応じた。

議長は武器供与の継続、先端技術での協力拡大を表明した。

会談には共和党のほか民主党議員も同席、「超党派」がリップサービスではないことを示した。

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蔡英文総統

 

かつては冷淡だった接遇

1990年代から、台湾の総統の米国トランジットは何度かあったが、冷淡、ひっそりとした扱いがほとんだった。

1994年、南米訪問に向かう李登輝総統(当時)の航空機が給油などのためハワイに着陸した際、入国が認められず、総統が機内で一夜を明かしたことがあった。

97年9月、やはり李総統がハワイに立ち寄った時は、「政治的行動を一切行わない」ことを条件にビザが発給された。2001年5月、陳水扁総統(同)が中南米訪問の機会にニューヨーク入りした際も同様だった。

国務省は当時、①旅行者の利便②快適性③安全性ーという台湾当局者へのビザ発給の条件に基づいて、政治的動きをしないことを条件に入国を認めていた。実態は必ずしも、「利便」「快適」に合致していたとは言い難かったが。

米政府は1995年6月、母校、コーネル大学を訪問する李総統にビザを発給、中国が反発して、同年から翌96年の総統選にかけて、台湾周辺にミサイルを撃ち込むなど〝選挙干渉〟してきた。米政府はこれに嫌気がさして、それ以後、台湾当局者へのビザ発給には慎重になっていた。

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李登輝総統

 

陳水扁総統の立ち寄り機に徐々に変化

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