2023-04-07 政治・国際

中国探査機が月から採取の標本から水検出 3300億トンの水資源が埋まっている可能性

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注目ポイント

中国の無人月探査機「嫦娥5号」が採取した月面サンプルから、将来の探検活動のために不可欠な、再生可能な水源が見つかったとする論文が先日発表された。それによると、月の表面には3300億トンもの水が埋まっている可能性があるという。

国際学術誌「ネイチャー・ジオサイエンス」に先日掲載された研究論文によると、中国と英国の学者が月探査機「嫦娥5号」が採取した「衝突ガラスビーズ」の中から水を検出した。これらの光沢のある、色とりどりのガラスビーズは2020年12月に同探査機が持ち帰ったサンプルに含まれていた。

AFP通信によると、中国科学院地質・地球物理研究所、中国科学院大学、南京大学、中国科学技術大学などの研究機関の研究者と、英国の研究者が共同で「嫦娥5号」のサンプルに含まれる32個の均質な衝突ガラスビーズを詳しく分析した。

その結果、ガラスビーズの平均水分量は0.05%だったことが分かった。ここでいう水とは、通常の意味の水ではなく、ガラスビーズの中に存在する水素のことで、この水素は一定の反応によって人間が利用できる水に転換することが可能だという。

今回発見された新たなメカニズムにより、専門家らは衝突ガラスビーズが、〝貯水の宝庫〟で、月全体では3300億トンもの水を貯蔵していると推定した。また、研究者の間では、「月の土壌の奥深くに帯水層は存在する。まだ発見されていないだけだ」との見方もある。

これらのガラスビーズの幅は、人間の髪の毛1本~数本分という超微小な太さで、数十億個が月面に散らばっているという。では、どのようにして衝撃ガラスビーズは作られたのか。

専門家によると、宇宙空間で隕石や小惑星が月に衝突すると、月表面の土や岩が溶けて飛び散り、液滴を形成し、その液滴が冷えることで衝突ガラスビーズが形成される。また、月面の土壌には酸素が含まれているため、生成されたビーズも酸素を含んでおり、太陽風から放射された水素原子(プロトン)がぶつかると、液体球中の酸素はカプセルに吸い込まれた水を形成するための反応を続ける。

また、これらのビーズは、適切な温度下では月の大気とその表面に水を放出するだけでなく、月での〝貯水池〟として機能する可能性もあるという。ただし、水を抽出するには、ビーズを加熱し、放出された水蒸気を冷却する必要がある。それでも将来、月面探査で収集した水を飲料用またはロケット燃料として使用できる可能性も出てきた。

中国科学院の惑星地質学者で、研究の共著者の一人であるセン・フー氏はロイター通信に、「惑星での持続可能な探査を可能にするためには、水が最重要」と指摘。「月面で水がどのように生成され、貯蔵され、補充されるかを知ることは、将来の探検家が探査目的でそれを抽出して利用するのに非常に役立つ」と解説した。

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