2023-04-06 政治・国際

米下院議長との会談で中国の「レッドライン」を打ち破った台湾・蔡英文総統【近藤伸二の一筆入魂】

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注目ポイント

4月5日午前(日本時間6日未明)、米カリフォルニア州ロサンゼルス郊外でマッカーシー米下院議長と会談した台湾の蔡英文総統。1979年の米台断交後、台湾の総統が米国で下院議長と会うのは初で、米台関係の強固さを世界にアピールした。2年連続で米下院議長との会談が実現した蔡氏にとって外交上の大きな得点だが、これに反発する中国の動向が注目されている。

超党派米議員18人も同席

台湾の蔡英文総統は4月5日午前(日本時間6日未明)、米カリフォルニア州ロサンゼルス郊外にあるレーガン大統領図書館で、マッカーシー米下院議長と会談した。1979年の米台断交後、台湾の総統が米国で下院議長と会うのは初めて。中国が強く反発する中、会談には超党派の米議員18人も同席し、米台関係の強固さを世界にアピールした。

会談後、蔡氏とマッカーサー氏は記者会見を開いた。蔡氏は「台湾の平和と民主はかつてない挑戦を受けているが、我々は孤立していない」と強調し、マッカーサー氏は「これほど米台の絆が強かったことはない」と述べ、台湾への長期的な支援を表明した。

蔡氏は3月29日、外交関係のある中米グアテマラとベリーズを訪問するため、台湾を出発。往路に米ニューヨークを訪れ、保守系シンクタンク、ハドソン研究所で講演し、同研究所からグローバル・リーダーシップ賞を授与された。今回は中米2カ国での首脳会談を終えた復路に立ち寄ったもので、会談には対中強硬派の下院中国特別委員会委員長、ギャラガー氏(共和党)や同委員会の民主党トップ、クリシュナムルティ氏らも加わった。

 

“親台派”レーガンゆかりの会場

双方がレーガン大統領図書館を会場に選んだのは理由がある。

1981年から89年まで米大統領を務めたレーガン氏は親台湾派で知られ、台湾に対して82年、「武器売却停止の期限を設けない」「台湾の主権に関する立場を変えない」などの「六つの保証」を約束した。トランプ前政権がこの「六つの保証」を明記して台湾への定期的な武器売却を促進する「アジア再保証推進法」を制定するなど、レーガン政権の「遺産」が今も台湾の安全保障に大きな役割を果たしていることを考慮した。

こうした事情を意識して、蔡氏は「平和を守るには、まず自らが強大でなければならないというレーガン大統領の信念を忘れるべきではない。我々は団結して心を一つにすれば、もっと強くなれる」と訴えた。

この会談を受け、中国外務省は報道官談話で「米国は蔡氏が『台湾独立』について発言する機会を与えたが、『一つの中国』原則に著しく違反する」と非難。

国防省も「国家主権と領土を断固として守り抜く」との報道官談話を発表し、対抗措置を取ることを示唆した。

 

下院議長との会談を「恒例化」

中国は2022年8月に当時のペロシ米下院議長が台湾を訪問して蔡氏と会談した際、1週間にわたる大規模な軍事演習に踏み切るなど、米大統領継承順位が2番目の要人である下院議長との会談は、越えてはならない「レッドライン」であるとの認識を示していた。

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