2023-04-04 政治・国際

安倍元首相は「台湾の真の友」⁈ 際立つ台湾社会の「アンベイ」像

© 3月30日、安倍晋三写真展にて (筆者撮影)

注目ポイント

賛否二分した国内の評価とは裏腹に「自由で開かれたインド太平洋戦略」や「地球儀を俯瞰する外交」などによって海外一般で高い評価を得た安倍晋三元首相。なかでも台湾での安倍氏人気は突出しており、今も多くの市民が「アンベイ」(安倍)と親しみを込めて話題にしている。台湾で帰化した台北在住のライター、広橋賢蔵氏が、台北で開催中の安倍氏の写真展に潜入し、来場者インタビューを通じて台湾社会の安倍氏像に肉薄した。

追悼音楽会、等身大銅像、写真展も

故安倍晋三元首相ほど、日本国内と国外で評価の分かれる政治家はいないだろう。

日本では賛否両論、というよりもメディアによっては批判の方が目立つのだが、それとは裏腹に海外一般の評価は高く、「地球儀を俯瞰する外交」の成果を象徴している。なかでも台湾での安倍人気は突出しており、多くの市民が台湾華語(マンダリンチャイニーズ)の発音で「アンベイ」(安倍)と、親しみをもって呼び、生前のマイナスイメージを口にする人は稀だ。

その安倍氏が凶弾に倒れた昨年7月8日以降、日本台湾交流協会台北事務所(日本大使館に相当)の前は、安倍氏の死を悼む人々が自然と集まり、献花があふれた。

8月20日には民間主催で追悼記念コンサートが開催されたのに続き、9月24日、南部・高雄市にある、日本の軍艦を祀っていることでも知られる紅毛港保安堂に等身大の安倍氏の銅像が完成した。

日本国内では、安倍元首相のための国葬(9月27日東京の日本武道館で開催)の是非をめぐって賛否が分かれるなか、台湾側のストレートで手厚い追悼ぶりは、日本出身で台北在住、帰化者である筆者にとっても、くすぐったく感じるほどだった。

台湾社会における安倍氏とは、一体どのような存在だったのか。

かねてから安倍氏の支持者に聞いてみたかった筆者は、3月27日から4月10日の15日間、台北市内で開催されている「不屈の政治家安倍晋三写真展~産経新聞カメラマンがとらえた雄姿~」(安倍晋三記念写真展実行委員会、民間シンクタンク・国策研究院主催)の会場に飛び込み、来場者らの声に耳を傾けてみることにした。

総統府から近い「張栄発基金会ビル」内の張栄発国家会議センターには、産経新聞社の報道写真を中心に安倍氏の夫人、昭恵さんが所有する写真など約200枚を中国語の解説付きでパネル展示。昨年11月の東京タワー、今年3月の大阪城ホールでの開催時に引けを取らない盛況ぶりで、開幕日の3月27日には訪米直前の蔡英文総統が、また翌28日には頼清徳副総統が見学に訪れるなど、現地でも大きな話題となった。

年配の参観者が多かった会場内=3月30日、安倍晋三写真展にて (筆者撮影)
映像で懐古するコーナーも充実していた=3月30日、同会場で (筆者撮影)

 

李氏と安倍氏の子弟関係次代へ

故人への追悼の意を込めた写真展でもあるため、会場は厳かな雰囲気。奥で上映されているビデオ映像では、安倍氏が愛した「花は咲く」などのメロディが奏でられていた。

筆者も安倍氏の写真の数々をゆっくり見て回りたかったが、今回は台湾人が安倍元首相をどのようにとらえているかが取材のテーマ。展示写真に向き合う地元来場者の姿の方をじっくり観察してみた。

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