2023-04-03 政治・国際

蔡総統「中国は意図的に緊張を高めている」 人民軍10機が中間線越え 訪米で圧力強化

© Taiwan's President Tsai Ing-wen's U.S. visit

注目ポイント

中米歴訪中の蔡英文総統は経由地、米ニューヨークの大手シンクタンク「ハドソン研究所」が開催したイベントで講演した。蔡氏は、「中国は意図的に緊張を高めているが、台湾は常に慎重かつ冷静に対応しており、台湾が双方の関係において責任を果たしていることを世界に示している」と述べた。一方、中国の戦闘機など延べ10機が1日、台湾海峡の暗黙の「休戦ライン」中間線を越えた。蔡氏の訪米を受け、圧力を強めているとみられる。

蔡氏を招いて3月30日にハドソン研究所が主催したイベントで講演した総統は、「台湾は世界の平和を望んでいる」と前置きした上で、「戦争を回避する最も良い方法は自らが実力を持つことだ。台湾は国際社会からの支持を必要としている。国際組織への加盟に協力していただきたい」と訴えた。

このイベントで同研究所は蔡氏に「グローバル・リーダーシップ賞」を授与。ウォルターズ所長は、「(蔡氏の)リーダーシップのもとで米国と台湾は安全保障と経済関係を拡大して深めた」と指摘。「蔡氏は大きな勇気と決意をもって民主主義(の台湾)を率い、専制に抵抗して、自由で開かれたインド太平洋地域を維持している」ことを高く評価した。

同イベントに参加した同研究所のシニアフェロー、ヌリー・ターケル氏によると、蔡氏は中国が台湾の民主主義を武力で破壊しようとする場合、米国は台湾側に付くとのメッセージを中国に明確に伝えることを希望すると述べた。ターケル氏はまた、「蔡氏は挑発的な態度を取ることなく、非常に明確なメッセージを発していた」という。

米政治ニュースサイト「パンチボールニュース」によると、総統はニューヨーク滞在中にハキーム・ジェフリーズ下院議員(民主党)とも会談した。

3月31日には米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長が、米軍の支援で台湾の防衛力を3~4年で強化し、軍事圧力を強める中国を抑止する考えを示した。軍事専門ニュースサイト「ディフェンス・ワン」のインタビューで語った。

3~4年とした理由について、中国の習近平国家主席が2027年までに台湾を侵攻できるよう準備しているからだと説明。侵攻の可能性については「差し迫っているとも避けられないとも考えていないが、警戒する必要はある」と述べた。

この日、蔡総統は外交関係のあるグアテマラに到着し、ジャマテイ大統領と会談。隣国ベリーズを含む中米訪問を開始した。中米ではホンジュラスが台湾と断交し中国と国交を樹立したばかり。米国の「裏庭」とされる中南米で、中国は台湾の外交関係の切り崩しを加速させており、蔡氏は断交ドミノを食い止めたい考えだ。

ホンジュラスが断交したことで、台湾と外交関係を持つ国は13か国と過去最少になり、うち7か国が中南米・カリブ海地域。その中でグアテマラは、人口や国内総生産(GDP)で最大だ。

そんな中、台湾国防部(国防省)は1日、中国の軍用機延べ18機と艦船延べ4隻が同日午前6時までの24時間に、台湾海峡周辺で活動したと発表した。うち戦闘機「殲16」など延べ10機が台湾海峡の暗黙の「休戦ライン」中間線を越えた。蔡氏の訪米を受け、圧力を強めているとみられる。

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