注目ポイント
日本統治時代の1914(大正3)年に開園し、台湾最古の歴史を誇る台北市立動物園。日本が台湾から去った戦後も動物の交換などでその交流は維持された。上野動物園や多摩動物公園で主に大型類人猿の飼育を担当し、現在、認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン理事長および日本オランウータン・リサーチセンター代表として大学などで類人猿の保護、啓蒙活動を行う黒鳥英俊氏が前回に引き続き台北市立動物園の魅力を深掘りする。
広さは上野動物園の12倍
前回に引き続き、台湾の台北市立動物園の動物の話をしましょう。
台北動物園は周囲の地域をいれて面積165ヘクタールとアジアの中でもトップクラスの大きな動物園です。
これは上野動物園の約12倍、東京ディズニーリゾート・パーク部分の2倍近い広大さです。同じ規模でいうなら、韓国・ソウル大公園や中国の広州近郊の長隆サファリパーク(長隆野生動物世界)と比肩し得る巨大な施設です。
また非公開の施設として、密輸などでワシントン条約に抵触し緊急保護された動物をあずかるレスキューセンター(野生動物収容中心)や、アジアでも最大級を誇る動物病院(動物医療中心)なども併設しています。

動物が見られるエリアでは、動物の生息地ごとに熱帯雨林区・アフリカ動物区・砂漠動物区など、7つの区と鳥園とに分けられ、さらにパンダ館や両生爬虫類館などいくつかの独立した施設もあります。そのなかのいくつか代表的な動物舎を以下、紹介します。

みんな大好きパンダ館
さて、手始めにパンダ館の話題から。
日本と同じく、とても人気のある動物で、いつ行ってもここは長蛇の列です。

誰からも好かれる愛らしい見た目のジャイアントパンダですが、実はとても政治的な動物です。日本の上野とは違って台湾に移動させることについては、以前、香港のオーシャンパークでも同じようなケースがあったのですが、中国の「国内移動」なのかどうかで、反対する意見などが噴出した動物です。
結局、中国と融和的姿勢が強かった馬英九総統(中国国民党)時代の2008年12月、オスの団団(團團・トゥアントゥアン)とメスの円円(圓圓・ユエンユエン)が中国から贈られました。その前にも宝宝(寶寶・バオバオ)やDiegoなどの出入りがあり新たにメスがきた訳です。そして2013年7月に人工授精によって円円が第1子、円仔(圓仔・ユエンザイ)を出産。2013年6月には第2子、円宝(圓寶・ユエンバオ)を出産しました。つい先日、上野動物園のシャンシャンが中国に返還されたのは記憶に新しいと思いますが、なぜ先に生まれた円仔がそのまま台北にいるのか、という疑問が出てきます。
実は、台北動物園とは相互「動物交換」という形をとったので、子どもの円仔は返還を求められず、そのまま台湾にいることができる、という訳なのです。そのときの台北動物園からの交換動物はシカ(梅花鹿)とカモシカ(長鬃山羊)2ペアずつでした。
2022年11月19日には父親の団団が18歳で死亡したニュースがネット上で流れましたが、私も食い入るように記者会見の様子などをみていました。私が台北動物園を離れてわずか1週間後のことでした。