2023-04-02 観光

台湾の漬物の味わい

注目ポイント

漬物には時間をかけた分だけ深い味わいがあり、漬物にすることで野菜はまた別のうま味を醸し出す。漬物を知ることで、その土地の風土が理解でき、地域の人々と食べ物との物語にも触れられる。収穫、洗浄、塩漬け、天日干しと、どのプロセスも手を抜くことはできず、それが人々の暮らしの一部となっている。長年にわたって続いてきた漬物作りは、台湾の農村の大切な文化なのである。

酸菜・メンマ・破布子

文・謝宜婷 写真・林格立 翻訳・山口 雪菜

ものを大切にする客家の人々は、同じカラシナから酸菜、福菜、梅乾菜という異なる漬物を作る。
メンマ入りの豚の角煮

苗栗県公館の「酸菜」

客家の人々の多くは台湾に移り住んできた当初、山間の僻遠地域に住むこととなった。こうした地域は資源が乏しいために食材を漬物や乾物にして保存する方法が発達した。中でも知られているのが「酸菜」である。苦みが強い深緑のカラシナを塩漬けにして寝かせることで、香りと酸味のある黄金の漬物となる。漬ける時間と日干しの時間を長くすれば、さらに風味が変化し、「福菜」や「梅乾菜」と呼ばれる別の漬物になる。

私たち取材班は「福菜之郷」と呼ばれる苗栗県の公館郷を訪れた。公館の市場からは遠くに山々が見える。市場では「冬芭」という漬物を売っていて、地元の人はこう説明してくれた。「昔は生活が苦しかったので、多くの食材を漬物にしました。冬芭はこの地域特有の果物の漬物です。このほかに、漬物桶をベッドの下に置いていたため取り出すのを忘れ、長年たって黒くなった老菜脯(大根の古漬け)と呼ばれるものもあります。これは今では貴重品として高値で売られます」

台湾美食技術交流協会の徐仲理事長の調査によると、苗栗県公館郷では3つの地域で酸菜が作られている。そのうち大坑と仁愛では伝統的な手作りが重んじられ、忠義地域では機械化による量産が行なわれている。毎年11月から3月がカラシナの収穫期で、産地では収穫に続いて酸菜作りが始まる。大坑地域でカラシナを栽培する陳啓浩さんの畑には、大きく育ったカラシナが収穫を待っていた。彼は、葉がやや短くて茎が厚く、繊維の細い「肉甲芥菜」というカラシナを栽培して漬物にしている。葉が長い「長葉芥菜」という品種の方は1株の重さが6キロに達する。こちらは漬物にした後、さらに天日干しにして水分を抜き、「梅乾菜」にするのに向いている(6キロのカラシナが600グラムほどの梅乾菜になる)。

陳啓浩さんによると、客家の伝統的な酸菜の最大の特色は何度も漬け桶を変えて塩で漬け直し、高い塩分濃度を保つことで腐りにくくすることだと言う。

一方「福菜」の方は、7~8日付け込んだ酸菜を取り出して洗い、天日に1日干して再び桶に入れて塩漬けし、5~6日後に再び取り出すという作業を繰り返す。これを3回繰り返した後、桶の中で3ケ月以上発酵させると完成する。また、梅乾菜は、完成した福菜を、水分含有量が5%ほどになるまで天日干しし、その後、半年以上屋内で寝かせたもので、独特の香りを持つ。

現在は、オレンジ色の漬物用のプラスチック桶を使うが、昔は畑に大きな穴を掘り、そこにビニールシートを敷いて漬けていたという。陳啓浩さんの家の付近にもあったそうだ。

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