注目ポイント
19世紀から20世紀前半のフランスで活躍し、最も革新的な画家のひとりといわれるジョルジュ・ルオーの本邦初公開作品を含む初期から晩年までの約70点が集結する回顧展が4月8日(土)から6月25日(日)までパナソニック汐留美術館で開催される。
19世紀から20世紀前半のフランスで活躍し、最も革新的な画家のひとりといわれるジョルジュ・ルオーの本邦初公開作品を含む初期から晩年までの約70点が集結する回顧展が4月8日(土)から6月25日(日)までパナソニック汐留美術館で開催される。
同美術館の開館20周年を記念する「ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―」では、ルオーが影響を受けた同時代の芸術家モローやセザンヌ、社会の動向、二つの大戦との関係に触れながら、ルオーという画家の装飾的な造形の魅力に迫る。
さらには、ルオーが戦争期に描いた重要作品《ホモ・ホミニ・ルプス(人は人にとりて狼なり)》や《深き淵より》が日本での初公開作品には含まれており、ルオーによる人間の苦悩と希望の表現が見るものに必ずや迫ってくるだろう。
◆「第I章 国立美術学校時代の作品―古典絵画の研究とサロンへの挑戦」——1890年、パリ国立高等美術学校に入学したルオーはギュスターブ・モローのアトリエに入門し、古典絵画の研究に励むとともに、自由で革新的な教育を受けた。この時期に描いたルオー最初期の貴重なデッサンや習作、サロン出品作品を紹介する。

◆「第II章 裸婦と水浴図―独自のスタイルを追い求めて」——初期の表現主義的な手法で描かれた娼婦から、セザンヌの影響を経て、装飾的な関心へと移行していく、ルオーの描く裸婦と水浴図を紹介し、ルオーが追い求めた独自の芸術スタイルを考察する。
◆「第III章 サーカスと裁判官―装飾的コンポジションの探求」——ルオーが生涯繰り返し追求した主題である、サーカスと裁判官。人間の本質がルオーによって見事に描き出された主題であると同時に、ルオーの装飾的コンポジションの探求が見て取れる。初期から晩年までのサーカスと裁判官を主題とする作品を通して、現実の社会や文化に向けられた画家のまなざしと彼の芸術の交差を考える。
◆「第IV章 二つの戦争―人間の苦悩と希望」——二つの大戦を経験したルオー。大戦期のルオーは、《ホモ・ホミニ・ルプス(人は人にとりて狼なり)》のような、戦争の残酷さや人間の苦悩を表現した作品を描く一方で、著名な編集者テリアドが発行していた芸術雑誌『ヴェルヴ』のために色彩豊かな作品も制作していた。

◆「第V章 旅路の果て―装飾的コンポジションへの到達」——1930年頃から作品に出現し始める明るい色彩と柔らかく安定感のあるフォルムは、1939年頃から次第にその特色を強めていく。そして最後の10年間には、色彩はますます輝きを増し、形体と色彩とマティエールとが美しいハーモニーを奏でる油彩画が数多く生まれる。ルオーが晩年にたどり着いた「かたち、色、ハーモニー」の究極的な表現を検証する。
