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2021-12-01

新型コロナ流行と感染防止措置について 独・哲学者のハーバーマスはこう見る

© AP / TPG Images

注目ポイント

ドイツの哲学者ハーバーマス(Jürgen Habermas)は、批判理論(Kritische Theorie)の第二世代である。2年前、90歳の高齢で2冊の大著『なおも一部の哲学史』(Auch eine Geschichte der Philosophie)を出版し、知識と信仰の関係を討論している。今年5月、彼はアラブ首長国連邦「ザーイド・ビン=スルターン・アール=ナヒヤーン(Sheikh Zayed)」が授与する図書賞の受賞を拒否し、現地の政治理念を認めるわけではないと示唆した。もし賞を受ければ、独裁政治の花嫁衣装となる。

 

政治情勢に対し、感染爆発後、社会に「Querdenker」グループが出現している。

「水平思考者」を意味するドイツ語だ。しかし、そこにある問題はかなり複雑なようだ。

 

陰謀論者、反ユダヤ主義者、極端な右翼組織、マージナル‐マンなどに及ぶからだ。新型コロナウィルスは政府が民衆の自由を抑制する手段だと考える者、ワクチンは製薬工場の利益の道具だと考える者、ユダヤ人資産家の陰謀だと考える者など。

そのため、反マスク令、反ワクチン、外出禁止令反対デモを行い、政府が発表した感染防止措置を守らず、個人の自由を守ることこそ、「真の」民主社会を守ることだと主張する。

 

インタビューでは、実はこういった現象は現代だけのものではなく、中世後期以降には、現代世界と自然科学を信用せず、拒絶する考えを生み、同時に幼稚な信念を持ち続ける人がいたという話になった。

こういった現象は実際、極端な自由主義の結果なのだ。

 

そこに合理的な根拠があるわけではなく、ただ自分だけの趣旨で、自己中心主義の表れなのである。ハーバーマスは、こういった現象は感染が去っても続くだろうと推測している。

 

インタビュー後半、ハーバーマスは脱植民地化運動と、身分政治の問題に触れ、異なる文化の樹立は、自分が独立した存在であるだけでなく、いわゆる不変の身分と文化がないからであると語った。

 

彼はヨーロッパの共融、相互協力を主張した。コロナ感染がイタリアで爆発した時、EUは最初はパニック状態に陥ったが、結果として感染の抑制が可能となり、最善の処置が講じられたことは、すでに明らかである。

 

最後に、ハーバーマスはイギリスの哲学者ラッセル(Bertrand Russell)が1959年に、将来の世代に向けた2つの提言に賛同した。1つ目は知恵の追求、2つ目は道徳の追求である。

 

ラッセルは「人は真相を追求すべきであり、自分の幻想に人生を導かれてはいけない。道徳はグローバル化した世界でも、人に対する寛容さと、人に共感することを求めている」としている。

 

ハーバーマスはラッセルの観点に賛同し、さらに補完した。歴史の発展から、奴隷制度の廃止、脱植民地化、死刑廃止、宗教の多元化、言論の自由、性別同権など、社会が少しずつ理性の時代に入り、人の道徳要求も絶えず引き上げられていることは明白である。

 

今現在、世界の問題を即時に解決する方法はないが、人の実践理性に希望を見出し、世界をよりよく改善することができる。また、カント哲学から啓示を得ることができるだろう。

 

原文作者: 戲言
原文責任編集者: Alex
原文校閲者: Alvin
翻訳者: TNL JP編集者
校閱者: TNL JP編集者

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