注目ポイント
ドイツの哲学者ハーバーマス(Jürgen Habermas)は、批判理論(Kritische Theorie)の第二世代である。2年前、90歳の高齢で2冊の大著『なおも一部の哲学史』(Auch eine Geschichte der Philosophie)を出版し、知識と信仰の関係を討論している。今年5月、彼はアラブ首長国連邦「ザーイド・ビン=スルターン・アール=ナヒヤーン(Sheikh Zayed)」が授与する図書賞の受賞を拒否し、現地の政治理念を認めるわけではないと示唆した。もし賞を受ければ、独裁政治の花嫁衣装となる。
ドイツの哲学流行雑誌『哲学マガジン』(Philosophie Magazin)、今期特集号のテーマはフランクフルト学派(Frankfurter Schule)の批判理論で、紹介されているのはアドルノ(Theodor Adorno)、ホルクハイマー(Max Horkheimer)、ベンヤミン(Benjamin)など第三、四世代の人物がいる。
またアクセル・ホネット(Axel Honneth)、ラーエル・ジェギ(Rahel Jaeggi)などの名も。今期特集号の先陣を切るのは、名声高いハーバーマスのインタビューで、内容は彼の政局、新型コロナウイルス、身分政治に対する見解に及ぶ。
インタビューの冒頭、ハーバーマスは自分が初めて師に会った時のことを振り返った。
1955年、当時アドルノはまだ一般的なイメージ上の「アドルノ」になってはおらず、思想もまとまってはいなかった。ハーバーマスは、アドルノは非常に礼儀正しく、彼に深い印象を与えたと語る。
哲学においてアドルノが彼に与えた影響は非常に大きく、その後の哲学の問題意識を決定づけた。
ハーバーマスは、アドルノは常に何かについて考えており、思想の嵐(Strom)の中にいて、同時にもたらされる苦痛(etwas Schmerzhaftes)は避けられなかったのだ、と語った。プライベートでは、アドルノはシンプルな生活を送っていた。
毎日昼に帰宅して昼食を摂り、3時に妻と共に研究センターに戻る、というスケジュールだ。

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他の学問同様、哲学も時代とともに進歩し、現実の問題に直面する。ハーバーマスは最新の著書で、哲学は学術専攻として、専門化は免れないとしている。しかし、彼は科学主義と業余主義(Szientismus und Dilettantisms)の潮流は、社会に危害をもたらすとも語った。
そのほか、新型コロナウイルス流行について、感染防止措置に対する見解を述べた。特に、健康を理由に個人の自由を制限する権利が国家にあるのかどうか。感染爆発以降、国家の権利と個人の自由は常に討論のテーマになっている。
総体的に、ハーバーマスはドイツの感染防止の態度に肯定的である。国家と民衆の協力団結(Solidarität)が感染防止の鍵だ。ハーバーマスは、国家が民衆の自由を制限するには、合法的な基礎が必要であり、同時に集団目標の追求と個人の自由の間の張力を保つことになると強調している。