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2023-03-29 経済

クレディ・スイス崩壊で沈黙貫くサウジアラビア

注目ポイント

スイス最大の金融機関UBSによる同業のクレディ・スイス(CS)買収。自身の発言でCS崩壊を招いた筆頭株主、サウジ・ナショナル・バンクの会長はその後、辞任の憂き目を見た。UBSによるCS買収は中東の株主に多大な損失を与えた。サウジアラビア政府関係者は今も沈黙を貫くが、中東メディアの反応は様々だ。

サウジ・ナショナル・バンクのアンマル・アル・フデイリ会長 Twitter

サウジ・ナショナル・バンクのアンマル・アル・フデイリ会長は15日、ロイター通信に対し、規制上の理由からCSに追加出資はしないと発言した。

「そう、私たちはできない」。フデイリ氏は言った。「(追加出資をすれば)10%を超えてしまうため、できない。規制上の問題だ」

フダイリ会長は、サウジ・ナショナル・バンクはCSの事業再建計画に満足しており、CSに今後追加出資が必要になるとは予想していない、と付け加えた。だが、同行が保有する株式がしかるべき価格を獲得した時点で売却するとも語った。

その数時間後、同会長はサウジアラビア政府系のテレビ局アル・アラビアに対し「CSに関する私の発言が間違って解釈された」と釈明、自身の発言によるダメージ払しょくに努めた。同行への出資比率を増やせないのは、CSへの出資比率を10%未満に制限している規約が理由だと繰り返した。

サウジ・ナショナル・バンクがCSから撤退する意向があるかと再度質問されると「現時点では、ない」と答えた。アル・アラビアによると、フデイリ氏の発言でCSの株価が一日で25%以上急落した。

決定打

米国で2つの銀行が破綻した矢先、フデイリ氏が発した言葉で金融界は大揺れとなった。不祥事続きで経営再建中だったCSの信用は失墜した。CSは1日に100億フラン(約1兆4千億円)もの預金が引き出され、経営はさらに悪化した。CSはこれ以上の株価急落を食い止めるため、スイス国立銀行(中銀、SNB)から最大500億フランを調達することで安定化を図った。だが、手遅れだった。

UBSによるCS買収はアラブ諸国、特にサウジアラビアとカタールの株主に大きな損失を与えた。アラビア語メディアの反応は様々だった。株主への影響に注目する声もあれば、銀行業界におけるUBSの台頭、世界最大のウェルス・マネジメント事業体が誕生することに着目するメディアもあった。だが、ソーシャルメディアでサウジ・ナショナル・バンクがCSに危険な投資を行ったこと、それによる損失への批判が出ている一方で、フデイリ会長の発言が与えた影響については誰も口にしない。

サウジ当局は最小の富の損失が出たことを認めた以外、目立った反応を示していない。

1つあるとすれば、CS破綻から1週間後の27日、フデイリ氏が「個人的な理由」で辞任を発表したことだ。同氏は、以前からサウジ・ナショナル・バンクは株価が上がればCSから撤退すると発言していた。だがその会長の辞任を報じたアル・アラビアは、同氏の発言でCSが1週間で破綻寸前に追い込まれたことには言及しなかった。

CSの物語

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