2023-03-31 ライフ

初めての告白にプロポーズ 台北花屋物語

© Photo Credit: Shutterstock / 達志影像

注目ポイント

好きな人への告白のため、初めて花屋を訪れた高校生。すでに結婚式が決まっていてもプロポーズ用の花束を買いに着たスウェット姿の男性ーー台北で花屋を営む日本人店主が出会ってきた、花を贈る人々のエピソード。

花を贈るという行為は、古来続いている世界的な文化である。現代でも、冠婚葬祭をはじめ、誕生日や発表会、記念日、プロポーズ、出産祝い、開店祝いなど、人生における重要な場面で花を贈ることは多い。

そして、花屋をやっているとお客様の大切な節目を、日々感じながら仕事をすることになる。お客様と会話をしていると、嬉しくなる出来事や涙する出来事、ときにはありえない出来事を伺いながら商品を制作する。今回は台湾で花屋をやっていて心に残っている台湾人とのエピソードをいくつかご紹介する。

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初めての告白

花は決して安いものではない。特に台湾は日本より物価が高くなってきているのに、平均給与は日本より安いことから、花は非常に高価なものとなる。そのため、若い人には馴染みのないものになりがちである。

私が開業して間もない頃、一人の高校生が店の前にやってきた。彼は、入り口でしばらく躊躇してから店内にゆっくりと入ってきた。何が欲しいのか伺ったところ、本人も分からないという。どうして花を買いに来たのか聞くと、どうやら好きな人に告白したいということが分かった。

彼は、花屋に入るのが初めてで、行くかどうかずっと悩んでいたようだ。台湾の花屋も日本と同様に女性スタッフが多く、年頃の男の子は確かに入りにくいだろう。私の店ではこのようなお客様でも入りやすいように、私も含めて毎日男性スタッフがいる。それを見て、彼も入る決意をしたようであった。

初めて花を買う時、特段下調べをしていなければ花の値段や種類が分からないのは当然である。彼の当初の予算は100元(約400円)で、バラ1本や安い花数本しか買えない。たとえバラ1本でも花を贈るという気持ち自体が大事であり、個人的には低い予算とは思わないが、多くのお客様は見栄えを気にするため、予算は低くても300元から500元くらいが多い。そこで、彼に提案したところ、300元の予算で花束を作ることになった。

告白相手の好みの色や花が分からなかったため、性格や雰囲気を聞いてみると、明るく元気で活発な子だという。そこで、黄色オレンジ系のミニブーケを制作すると、彼は大変喜んで店を後にした。その数日後、彼は初めての彼女と一緒に店に来て、楽しく花を選んでいた。

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プロポーズから結婚まで

あるスウェットを着た男性が、プロポーズ用の花が欲しいと相談に来た。話を聞くと、すでに籍を入れて結婚式を挙げることも決まっているが、プロポーズはまだしていないという。

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