2023-03-28 政治・国際

プーチン氏、ベラルーシに核兵器配備を宣言 EU「安全保障に脅威」、米研究機関「情報戦」

© Photo Credit: GettyImages

注目ポイント

ロシアのプーチン大統領は25日、同盟国ベラルーシへの戦術核兵器配備を決め、保管施設が7月1日に完成すると国営テレビで明らかにした。欧州連合(EU)は「欧州の安全保障に対する脅威になる」とし、追加制裁で対応する構えを示した。ただ、ロシアの動きについて米シンクタンクは、ウクライナの士気をくじき、米欧の軍事支援をやめさせようとする「情報戦」の一環だと分析した。

プーチン露大統領は国営テレビとのインタビューで、侵攻するウクライナに劣化ウラン弾などを供与するとしている米欧の軍事支援強化への対抗措置だと強調し、北大西洋条約機構(NATO)側を強くけん制した。ロシアが他国領内に核兵器を配備すれば、1991年のソ連崩壊後に核兵器保有を放棄した旧ソ連諸国から引き渡しを受けて以来、初めてとみられる。

プーチン氏は、ベラルーシのルカシェンコ大統領が以前から同国への戦術核兵器配備に関する問題を取り上げてきたと指摘。「米国は何十年も前から戦術核兵器を同盟諸国に配備している。われわれも同じことをする」と明言。ベラルーシへの配備は譲渡ではないとし、「核兵器不拡散の国際義務には違反しない」と主張した。

さらに、ベラルーシに戦術核兵器を搭載できる航空機を10機配備したと明らかにし、核兵器を発射できる戦術ミサイルシステム「イスカンデル」をすでに同国に配備しているとも述べた。

ベラルーシはNATO加盟国のポーランド、リトアニア、ラトビアと国境を接する。

米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は米CBSの番組で26日、ロシアが「核兵器を使う意図を示すような兆候は確認していない」としながらも、同時に「われわれは毎日監視している」と強調した。カービー氏はまた、「核戦争を起こすべきではない」と訴え、米国が戦略的抑止に向けた態勢の変更を強いられる事態は起きていないとした。

プーチン氏は、英国がウクライナへの供与を表明した劣化ウラン弾は危険な武器だと非難し、核関連の兵器使用を進めているのは米欧側だとして戦術核の国外配備を正当化している。

劣化ウラン弾とは、ウラン鉱石を精製した後の純粋ウランからウラン濃縮を行い、核燃料としての低濃縮ウラン燃料を得た後に残る残渣(ざんさ=残りかす)を主原料とする合金を使用した弾丸。劣化ウラン弾は目標の装甲板に侵徹する過程で先端部分が先鋭化しながら侵攻する自己先鋭化現象を起こし、一般的な対戦車用砲弾(タングステン合金弾)よりも高い貫通能力を持つとされる。

また、欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は26日、もしロシアがベラルーシに戦術核を配備すれば、新たな制裁を科す用意があると警告。NATOは「危険だ」と強く非難。ロシアと米欧の対立激化が鮮明となった。

ボレル氏はツイッターで、「ベラルーシがロシアの核兵器を持てば、欧州の安全保障に対する脅威になる」と指摘。「EUは追加制裁で対応する準備ができている。ベラルーシはまだ止めることができる」と訴えた。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい