2023-03-27 経済

スイス一高いロシュタワーは何を目指す?

注目ポイント

スイス随一の高さを誇るバーゼルのロシュタワー。働き方が急激に変化し、オフィス不要論も出るなか、なぜ都市部にオフィスが増えているのか?

ライン川沿いに建つサメの背びれ。バーゼルの風景はロシュタワーの登場により激変した © Ruedi Walti

バーゼルの屋根の間からそびえ立つ巨大な細いサメの背びれのような高さ205メートルの高層ビル。スイスの製薬大手ロシュは昨年9月の第2ビル開業時に「世界で最もサステナブルなオフィスビル」と喧伝した。最もサステナブルで最も高いだけではない。外観も白く輝きエレガントだ。

驚くのは、一般向けにビルの高さではなく、ビルがサステナブルである点を前面に押し出していることだ。この50階建てビルの総工費は5億5千万フラン(約800億円)、合計3200人のロシュ社員が働く。205メートルというスイス一高いビルの新記録に関しては軽くしか触れていない。

オフィスでなければできない仕事が限られている今の時代に、オフィス用高層ビルが2棟も3棟も建設されるというのは、驚きに値する。

従業員の多くがほとんどの仕事をリモートやオンラインでできるなら、サステナブルなオフィスの全く新しい形が浮かび上がる。通勤は最小限に抑え、決められた仕事の時だけオフィスに行くようにするのが本当のサステナブルなのではないか?

例えば、便利だがどうしても距離ができるオンライン会議よりも対面での話し合いが望ましい場合にオフィスの利用が考えられる。

ビル2の1階ではフランスの著名な植物学者兼アーティスト、パトリック・ブラン氏が手掛けた緑化壁が室内を彩る © Roche

職場環境の専門家は従前から快適な自宅や山小屋でどれだけ生産的に仕事ができるのかを議論していたが、パンデミックの影響でオフィスの新しい概念が急激に発達した。新型コロナウイルスのおかげで長距離を移動することなく家で仕事をすることが突然日常的になり、在宅勤務が義務になった人も多かった。

現在オフィスとして使用されているロシュタワーの大部分が建設されたのはこうした状況下だった。設計図はパンデミックよりずっと昔に完成しており、建築現場ではひたすら計画通りにクレーンが壁や支柱を高く積み上げていった。

サステナブルな建設には、最新の建築技術と環境に配慮した建材を選ぶことが重要だ。しかしあらゆる場所で使われているコンクリートの木材への切り替えは、今のところ一部の低層家屋でしか進んでいない。建設業界は、建物の建設と維持に消費される資源を減らす努力をするしかない。

ビル2の最上階は眺めの良い社員食堂だ © Roche

スイスの新記録を更新するツインタワー

ロシュのいわゆる「ビル2」は同社の2番目のビルと言う意味ではなく、スイスの高層ビルの記録を破る2番目のビルという意味だ。1番目はそっくりの大きな双子の弟ビルのすぐ隣に立っている。

「ビル1」は同じく白く、先細りの階段状のデザインで、ビル2と全く同じように見えるが高さは178メートルと若干低い。2016年にスイスの高層ビルの記録を破った。それまで最も高かったのは126メートルのチューリヒのプライムタワーで、5年間首位を維持した。

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