2023-03-27 政治・国際

中国の「外交孤立化」策に追い込まれる台湾、2024年総統選の行方にも影響【近藤伸二の一筆入魂】

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注目ポイント

中米ホンジュラスは3月26日、台湾と断交し、中国と正式な外交関係を結んだ。蔡英文政権下の台湾と断交したのは9カ国目。これで台湾が外交関係を持つ国は13カ国に減少し、29日からの蔡英文総統の中米2カ国訪問に水をさされた形となった。2024年1月に迫った台湾・総統選を前に、中国は台湾の「外交孤立化」策を進める構えで、対抗する米国と合わせた両国の動向が、総統選の結果を左右する情勢となってきた。

台湾の呉釗燮・外交部長(外相)は記者会見を開き、「長年支援してきたのに、友好関係を無視した」とホンジュラスのカストロ政権を非難し、断交のタイミングが蔡氏の外遊直前となったことについて、「中国が意図的に動いた可能性がある」と指摘した。

呉氏は、カストロ政権が断交前に、病院やダム建設費、債務の肩代わりなどとして計約24億5000万ドル(約3200億円)の経済援助を求めてきたことを暴露し、「直接の金銭要求は賄賂のようなものだ」と批判した。蔡氏は「中国がいくら圧力をかけようとも、自由と民主を堅持し、世界に向かって歩んでいこうとする台湾人民の意志をくじくことはできない」と訴えた。

一方、北京を訪れたホンジュラスのレイナ外相は、中国の秦剛外相とともに“国交樹立”に関する文書に署名した。ホンジュラス外務省は「台湾は中国の不可分の領土の一部」と表明し、中国外務省はホンジュラスの決定について「時代の流れに沿った正しい選択だ」と称賛した。

ホンジュラスのレイナ外相は、中国の秦剛外相とともに“国交樹立”に関する文書に署名した

蔡氏は3月29日から4月7日までの日程で、外交関係のある中米グアテマラとベリーズを訪問する。往路と復路に米国に立ち寄り、4月5日にはカリフォルニア州ロサンゼルスでマッカーシー下院議長と会談する方向で調整している。

また、米政府は、3月29、30両日にオンライン形式で開催する第2回「民主主義サミット」に、台湾の唐鳳(オードリー・タン)デジタル発展部長(デジタル発展相)が参加することを明らかにしている。これらを通じて、蔡政権は米台関係の緊密さを世界にアピールしたい考えだ。

21年のホンジュラス大統領選で当選したカストロ氏は、中国との国交樹立を選挙公約に掲げていた。だが、ホンジュラスは経済的に大きく米国に依存しているのが実情だ。22年1月の大統領就任式に出席したハリス米副大統領は、カストロ大統領に台湾と断交しないよう申し入れ、カストロ氏も就任式に台湾の頼清徳副総統を招待した。こうした状況から、カストロ政権は台湾と外交関係を継続する方針に転じたとみられていた。

だが、カストロ氏は3月16日、レイナ氏に中国と正式な外交関係を樹立するよう指示したことを公表した。これに対し、バイデン米大統領の米州特別顧問を務めるドッド元上院議員がホンジュラスを訪れ、翻意を促したこともあって、ホンジュラスが中国と国交を結ぶにしても、米国の説得などに時間がかかるとの観測が流れていた。

それだけに、両国が迅速に国交樹立に踏み切ったのは、中国が米台関係にくさびを打ち込むため、蔡氏の外遊や「民主主義サミット」前に実現させるよう急がせたとの見方が強い。中国は見返りに、大規模な経済支援を約束した可能性もある。

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