2023-03-23 政治・国際

2024総統選をにらみ「米国カード」と「中国カード」で応酬する台湾の与野党

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注目ポイント

2024年1月の総統選まで10カ月足らずとなり、台湾の与野党の駆け引きが活発化してきた。与党・民主進歩党が「米国カード」を切れば、最大野党・中国国民党が「中国カード」で応戦するなど、米中対立の激化に伴ってヒートアップしている。

台湾の総統府は3月21日、蔡英文総統が3月29日から4月7日にかけて外交関係のある中米グアテマラとベリーズを訪問し、経由地として米国に立ち寄ると発表した。往路の3月30日にニューヨーク、復路の4月5日にカリフォルニア州ロサンゼルスを訪れる。ニューヨークでは、有力シンクタンクの招待により講演する予定。ロサンゼルスではマッカーシー下院議長と会談し、郊外にあるレーガン大統領記念図書館で講演も行う方向で調整している。

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蔡英文総統

16年の総統就任以来、蔡氏が米国入りするのは7回目で、過去6回は全て中南米への外遊を利用して入国している。今回の訪米についても、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は「非公式かつ個人的なもので、台湾総統が米高官や国会議員と会談するのは珍しいことではない」と中国側をけん制した。

だが、米下院議長は大統領継承順位が副大統領に次ぐ要職であり、22年8月に当時のペロシ議長が台湾を訪問して蔡氏と会談した際は、中国は報復として大規模な軍事演習に踏み切った。台湾総統が米国で下院議長と会談するのは初のケースとなるだけに、これを前例にしたくない中国は、蔡氏の訪米計画に「断固反対する」(汪文斌・外務省副報道局長)と強く反発している。

蔡氏にとって、この外遊には二つの意味がある。一つは、外交基盤を固めることだ。蔡氏が総統になってから、中国の圧力によって8カ国と断交に追い込まれ、現在、外交関係を持つのは14カ国のみ。そのうち8カ国が中南米・カリブ諸国だ。

その1国である中米ホンジュラスのカストロ大統領は3月になって、中国と国交を樹立するよう外相に指示した。実現すれば、台湾との断交は避けられず、中南米・カリブ地域の他国にも影響を及ぼす恐れがある。蔡氏は今回、訪問先のグアテマラとベリーズに経済や医療面などの援助を提供することで、「断交ドミノ」だけは阻止したい考えだ。

それ以上に大きな意味を持つのが、米国との関係を緊密化させることだ。蔡氏の総統任期はあと1年余りとなったが、これまでの最大の功績として、安全保障面で米国の後ろ盾を強固にしたことが評価されている。今回の訪米はその総仕上げと位置付けられ、マッカーシー氏との会談や講演を通じて、米側からさらなる台湾支援の約束を取り付けることができれば、住民にアピールする効果は大きい。

安全保障面の進展としては、民進党と日本の自民党が3月21日、台北市で開催した日台与党間の「外務・防衛2プラス2」と銘打った外交、国防担当議員の会合もあげられる。21年8月と12月にオンラインで開いたことはあったが、対面では初めてで、米国の同盟国も含めた安全保障の枠組みが広がりつつあることを示している。台湾有事が現実味を帯びて語られるようになる中、こうした日米との連携強化は、総統選を有利に進める材料になる。

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