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22日まで3日間の日程でロシアを訪れている中国の習近平国家主席は、プーチン大統領とモスクワのクレムリンで会談した。両首脳はウクライナ問題について解決の行方はウクライナと欧米次第だとし、西側に責任転嫁した。一方、国際刑事裁判所(ICC)が先週、戦争犯罪の容疑でプーチン氏らに逮捕状を発行したことにロシアは激しく反発し、ICCの判事らに対する捜査を開始したことを発表した。
ロシアを公式訪問した中国の習近平国家主席とプーチン大統領は21日、モスクワのクレムリンで2日目の会談を行った。習氏は国家主席として3期目入りしてから初の外遊となった。
中国共産党機関紙・人民日報が発表した声明によると、ロシアは中国のウクライナへの対応を「客観的で公正」と肯定的に評価し、いかなる国も「軍事的、政治的、その他の利益を追求するため、他国の正当な安全保障上の利益」を害することに両国は反対すると主張した。
声明はまた、ウクライナでの戦争を終結させるためには、「全ての国の正当な安全保障上の懸念」が尊重されなければならず、「緊張を高める行為」や「ブロック間の対立」は防がなければならないとし、ウクライナ問題の解決はウクライナ自身と欧米次第だと責任転嫁した。
その上で、プーチン氏は「中国が提示した和平案はロシアのアプローチに沿ったもの」だとし、西側とウクライナが準備を整えれば平和的解決の土台になると説くと、習氏は中国が「常に平和と対話と歴史の正しい側に断固として立つ」と明言。結局、ウクライナ問題をめぐって両首脳は具体的な解決の糸口を示さなかった。
ロシアのタス通信によると、習氏は21日にロシアのミシュスチン首相とも会談し、プーチン氏に年内の訪中を招請したと伝え、首相の訪中も求めた。
中露首脳がモスクワで2日目の会談を行う中、日本の岸田首相はロシアの侵略が続くウクライナへの支持を表明するため、懸案だったキーウを電撃訪問。米紙ニューヨーク・タイムズは、「紛争地帯への突然の訪問をしたことで、岸田首相は日本が迅速かつ積極的にウクライナと連帯することを示し、東アジアの隣国2か国との外交姿勢の違いを鮮明にした」と伝えた。
中国外務省は岸田氏のウクライナ訪問について、日本は「事態のエスカレーションを緩和するのに役立つべきで、その反対ではない」と反応した。
一方、習氏が首脳会談前から示していた停戦案について、米国のブリンケン国務長官は20日の記者会見で、「中国などの支援を受けるロシアがどんな戦略的な動きをしようと、世界はだまされるべきではない」とけん制。バイデン米政権は中国によるロシアへの武器供与を警戒しており、ウクライナ情勢で建設的な役割を果たすと主張する習氏の外交努力に懐疑的な見方を示した。
ブリンケン氏は、国際刑事裁判所(ICC)が戦争犯罪の容疑でロシアのプーチン大統領らに逮捕状を出した直後のモスクワ訪問となった点にも触れ、習氏には「ロシアによる残虐行為に責任を取らせようという気が一切ないことを示している」と批判した。