注目ポイント
何十にも上る日台間の姉妹鉄道協定の中でも、もっとも古いのが大井川鐡道と阿里山森林鉄道による締結。100年近い歴史を誇る大井川鐵道は、台湾人観光客の間で知名度は少ないものの、周辺には台湾人ウケしそうな魅力的な観光地がいくつも点在している。台湾出身の筆者が特に面白いと感じた観光スポットを前後編で紹介する。
「114」この数字の意味を、あなたは知っていますか?
実はこれ、日台間の自治体における「姉妹都市」など友好交流の提携数を指しています(2023年2月時点)。もともとここまで多くなかったのですが、日台間の民間交流が盛んになったこの10年で、ずいぶんと増えました。
それでは続けてもう一問。「42」こちらは何の数字でしょう?
答えは日台間の「姉妹鉄道」の締結数。スイスやデンマークなど海外の鉄道と日本の鉄道の姉妹協定はあっても、40を超える締結数は台湾ぐらいなものでしょう。
その歴史的な記録を作るきっかけとなったのが、37年前の締結です。1986年、静岡県島田市に本拠をおく大井川鐵道と、台湾の阿里山森林鉄道の間で、日台初めての姉妹鉄道協定が締結されました。
そもそも大井川鐡道はどんなところを走っているのか? 締結のきっかけは? 鉄道ファンには魅力的な場所かもしれないけれど、一般人が行っても楽しめそう? そんな謎を前後編で明らかにしたいと思います。
締結のきっかけは「共通点」の多さにあり?
大井川鐵道は観光列車として有名な、静岡を代表する鉄道の一つ。普通の電車だけでなく、レトロなSLやトロッコ列車、さらには「きかんしゃトーマス号」など、多種多様な観光列車が走っており、鉄道ファンだけでなく一般観光客にも人気な鉄道です。
そんな大井川鐡道が、37年前、なぜ台湾と姉妹鉄道を締結したのか…。もちろん、阿里山森林鉄道は台湾の観光鉄道として、抜群の知名度を誇っています。インドのダージリン・ヒマラヤン鉄道、チリーアルゼンチンを結ぶアンデス山鉄道と並び「世界三大登山鉄道」の一つに数えられているほどです。
© 林務局
しかし、「姉妹」と称するからには、なにかしらの共通点が必要なものです。過去様々な締結例を見ても、同じような歴史を辿っていたり、自然環境が類似していたりといった共通点があります。
調べてみると、大井川鐡道と阿里山森林鉄道にも様々な共通点があることがわかりました。まず一番のポイントは、両者とも「アプト式鉄道」だということ。いきなりの専門用語ですが、身構えなくても大丈夫。要は急斜面を登り降りするのに特化された鉄道のことです。しかも、大井川鐡道は日本で唯一のアプト式鉄道です。
また、今でこそ観光列車として知られている大井川鐵道ですが、創立当初は森林資源の輸送を目的としていました。その理由は、島田市が木材産業で栄えていたから。一方で阿里山森林鉄道も当初は林業鉄道で、世間の需要に合わせて観光にシフトしていった経緯があります。互いにSLが活躍し、森林の中を走るという、歴史面でも環境面でも似通っていることが締結につながったのかもしれません。