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米ニュージャージー州ニューアーク市は1月、ラス・バラカ市長がヒンドゥー教国家「カイラサ合衆国」の代表団を招待し、姉妹都市提携に調印した。ところが、ふたを開けてみればそんな国は存在せず、カイラサの元首とされる男はインド当局から指名手配された詐欺師だったことが判明。まんまと騙されたニューアーク市は赤っ恥をかくハメになった。
バラカ市長は1月12日にニューアーク市庁で行われた調印式で、「カイラサ合衆国」の代表団を前に、「われわれの関係が文化的、社会的、政治的発展を理解することに役立ち、双方の全ての人びとの生活を改善することを願う」と宣言し、姉妹都市契約書に署名した。だが、その5日後、カイラサなどという国は存在していないことを確認した。
先週になってニューアーク市は、インドの司法当局から逃亡中で、ヒンドゥー教のカルト教団の教祖スワミ・ニシアナンダという45歳の男による詐欺案件だったことを告げられたことを正式に認めた。市当局者によると、カイラサとの姉妹都市提携は「根拠がなく無効」として破棄した。
同市広報担当官は、「残念だったが、ニューアーク市は引き続き、連帯や支援、相互尊重によって互いを豊かにするため、多様な文化の人々と提携することに引き続き取り組んでいる」と釈明。その上で、金銭の譲渡はなかったと強調したが、赤っ恥をかくハメになった。
ニューアーク在住のシェイキー・メリットさんは米CBSニュースに、「市役所にグーグル検索した人は1人もいなかったのか。これだから、市の行政には変革が必要なのかもしれない」とあきれた。
英紙ガーディアンによると、グーグルマップで「カイラサ」を検索すると、インド南部に複数のヒンドゥー教寺院が示され、同時に同国を「古代の悟りを開いた文明。偉大な宇宙の国境のないヒンズー教の国」と謳(うた)い、ニシアナンダ被告を「復興者」とするウェブサイトへのリンクがあらわれる。
だが、インドメディアによると、ニシアナンダ被告は2019年、教団信者のレイプと、児童誘拐の容疑で起訴されたが、起訴事実を否定。同年11月にインドから逃亡した。その翌年、同被告は南米エクアドル沖の島を購入し、新たな国家として宣言したというのだ。
同年12月、英紙ガーディアンは、ニシアナンダ被告の教団の代表団が、英貴族院が開催した「光のフェスティバル」と呼ばれるヒンドゥー教の祭「ディワリ」を祝うパーティーに出席したと報道。同教団に詳しいジャーナリストは英紙オブザーバーに、凶悪犯罪に関与したとして起訴され、逃亡した人物が主宰するカルト教団を英国議会が招待したことは不適切で衝撃を受けたと語った。
一方、スイス・ジュネーブでは2月、「女性の意思決定への参画」、「持続可能な開発目標(SDGs)」というそれぞれのテーマで開催された2回の国連委員会にカイラサ合衆国大使と名乗る女性が討論に参加した。