注目ポイント
スイスのIT企業IQAir社が今週発表した調査結果によると、地球の大気汚染は急激に進み、昨年、健全な大気質に関する世界保健機関(WHO)の基準を満たしたのは、世界でわずか13の国・地域だけだった。その主な原因は化石燃料の使用と、気候変動がもたらした山火事だという。
世界の大気質を調査しているIQAirによると、分析対象131か国・地域の約90%で世界保健機関(WHO)の大気質ガイドラインの基準を上回っていることが判明。オーストラリア、エストニア、フィンランド、グレナダ、アイスランド、ニュージーランドの6か国と、グアムやプエルトリコを含む太平洋とカリブ海の7つの地域だけが基準をクリアしていた。
一方、チャド、イラク、パキスタン、バーレーン、バングラデシュ、ブルキナファソ、クウェート、インドの7か国では、平均大気汚染が1立方メートルあたり50マイクログラムを超え、5マイクログラム以下とするWHOの基準をはるかに超える劣悪な大気質だった。
この調査では、最も小さい汚染物質で、同時に最も危険な「PM2.5」に特に注目。PM2.5とは、大気中に浮遊する小さな粒子のうち、粒子の大きさが2.5マイクロメートル(1マイクロメートル=1ミリの1000分の1)以下の非常に小さな粒子。吸入すると肺組織の奥深くまで侵入し、血流に入る恐れがあるとされる。化石燃料の燃焼、砂嵐、山火事などから発生し、喘息、心臓病、その他の呼吸器疾患など、多くの健康被害をもたらすことが分かっている。
WHOは2021年9月、大気質ガイドラインを16年ぶりに見直し、許容できる微粒子状物質の量を1立方メートルあたり10マイクログラムから5マイクログラム以下に下げた。
毎年、何百万人もが大気汚染関連の健康被害による死亡が報告され、WHOによると、16年には約420万人の早期死亡者が微粒子状物質に関わっていた。
報告書はまた、憂慮すべき不平等を強調している。アフリカ、南米、中東の発展途上国には十分なモニターステーションがなく、その結果、これらの地域の大気質データは不足していると記している。
アフリカは21年と比較して、今回の報告書に含まれる国の数が増えたものの、IQAir によると、アフリカ54か国のうち19か国だけがモニターステーションから必要なデータを入手できたという。
IQAirノースアメリカのグローリー・ドルフィン・ハメス最高経営責任者(CEO)は米CNNに、21年のチャドのように、かつて大気質データが不足していた国が新たに追加されるたびに、それらの国が必然的に最も汚染されたリストのトップになると指摘した。
同氏は、「衛星データまたはモデル化されたデータと呼ばれるものを見ると、アフリカはおそらく地球上で最も汚染された大陸であるはずだが、十分なデータがない」とした上で、「これが意味することは、世界で最も汚染された国や都市を真に判断するには、さらに多くのデータが必要になるということ」と説明した。