2021-12-01 政治・国際

北京冬季五輪まで2か月…中国女子テニス 選手の「あの騒動」でIOCに猛批判が殺到

© AP Images

中国女子テニス選手・彭帥さん(35)の失踪問題で、国際オリンピック委員会(IOC)が窮地に立たされている。

 

この問題は先月2日、中国の大物政治家、張高麗元副首相(75)から性的関係を強要され不倫関係になったとする告白文を微博(ウェイボー)に投稿し、その直後から約3週間も安否不明になっていたものだ。

 

IOCは先月21日、ようやく北京の自宅にいた同選手とビデオ電話を通じ、本人の安全を確認したと発表。ところが、このことでIOCと中国政府の癒着疑惑が浮上し、批判が巻き起こっているのだ。

 

彭選手は過去3度の五輪出場経験を持ち、2013年ウィンブルドンと14年全仏オープンの女子ダブルスで優勝という、中国テニス界のレジェンド。

 

女子テニスの世界ツアーを統括する国際団体・女子テニス協会(WTA)のスティーブ・サイモン最高経営責任者(CEO)は、当初からこの問題を重要視し、彭さんとの連絡を何度も試みたが中国側から返答がなかった。

 

そのためサイモン氏は「女子ツアーの中国から撤退も辞さない」との強い姿勢で中国当局に調査を要求した。

 

また、“同僚”のセレナ・ウィリアムス選手や大坂なおみ選手らトップアスリートに加え、人権団体や政治家、多くのファンらもSNSで彭さんの無事を願い、「#彭帥はどこ?」というハッシュタグを拡散。西側メディアはこの問題を連日取り上げた。

 

それまでこの件に関して沈黙してきたIOCも国際社会の懸念が大きくなるにつれ風当たりが強くなり、その結果何らかのアクションを取らざるを得なくなった。そして、苦肉の策がビデオ電話だったというわけだ。

 

IOCは、北京の自宅で当局監視のもと軟禁状態にあるとみられる彭さんとトーマス・バッハ会長のビデオ電話をお膳立て。

 

性的暴行疑惑について何ら触れることなく、彭さんに「北京の自宅で安全かつ元気にしている」「今はプライバシーを尊重してほしい」とのメッセージを引き出すことだけで、この“事件”の幕引きを試みた。だが、その思惑は見事に外れてしまった。

 

そもそも、なぜIOCが中国側にこの問題を処理する必要があったのか。最大の理由は来年2月に迫った北京冬季五輪の開催なのは明白だ。しかも、米紙ニューヨーク・タイムズによると、張氏こそ北京冬季五輪の誘致に深く関わった人物。

 

18年まで競技場建設や交通手段まで全てを担当した運営グループのトップを務め、バッハ会長やIOC委員らとの親交疑惑も報じられている。そんな関係からビデオ電話の意図が透けて見えるIOCと中国との関係に批判が殺到しているのだ。

 

「IOCは中国のプロパガンダに乗せられ、その体制を守るために共謀してはならない」と、ドイツ人アスリートを代表する団体「アスリーテン・ドイチェランド」の国際広報担当者はタイムズ紙に強い言葉で批判した。

 

同紙はまた、多くの国のオリンピック委員会はそれぞれ国内で、中国の人権問題に毅然とした態度で発言するよう迫られ、IOCに対しては中国べったりの弱腰姿勢に大きな不満を抱いているとしている。

 

米国、英国をはじめ西側各国では、北京五輪への“外交ボイコット”が検討される中、開幕まであと2か月ほどに迫った“平和の祭典”をIOCはどう乗り切るのか、世界の厳しい視線が注がれている。