2023-03-14 政治・国際

アカデミー賞で「エブエブ」が主要賞総なめ ハリウッドは〝アジアの時代〟に追いつくか

© Photo Credit: GettyImages Michelle Yeoh

注目ポイント

米国の「第95回アカデミー賞」授賞式が12日(日本時間13日)、ロサンゼルスで行われ、主要キャストのほぼ全員がアジア系の作品「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(略称エブエブ)が、最多7部門でオスカーを受賞する快挙を達成した。前哨戦の賞レースでも同映画が各賞を総なめし、英BBCは「ハリウッドがようやく〝アジアの時代〟に追いつこうとしている」と報じた。

今年のアカデミー賞の〝大本命〟とされた「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」は下馬評通り、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞など主要部門を含む7部門を制覇した。

主演女優賞に輝いたミシェール・ヨーの同賞受賞は、長いハリウッドの歴史の中でもアジア人として史上初。また、最優秀助演男優賞の中国系ベトナム人俳優キー・ホイ・クァン(51)もアジア系として同賞の受賞は史上2人目、38年ぶりとなった。(最初は1985年、「キリング・フィールド」のカンボジア出身の俳優ハイン・S・ニョール)

物語の主人公で中国移民のエヴリンを演じるのは、中国系マレーシア人ミシェール・ヨー(60)。破綻寸前のコインランドリー経営に加え、米国に移住してきた父親の介護、頼りない夫、反抗的な娘との生活に疲れ果てるエヴリンは突如、「全宇宙にカオスをもたらす悪を倒せるのは君だけだ」と告げられ、世界と家族を守るため「並行世界(マルチバース)」で悪に立ち向かうという支離滅裂なストーリー。全く先の読めない破天荒でスリリングな展開を、同作は映像で表現。それが評論家や映画ファンから高く評価された。

先月の全米映画俳優組合賞(SAG賞)でも各賞をほぼ独占。最後には作品賞を受賞し、共演者らと受賞のスピーチで壇上に立った94歳の中国系俳優ジェームズ・ホンは、かつてハリウッドが「アジア系はカネにならない」と見下された時代があったと紹介。その上で、「今のわれわれを見て、どうだ?」 と茶目っ気たっぷりにそう問いかけ、会場を沸かせた。

ホンも出演した「エブエブ」は、全世界での興行収入がすでに1億ドル(約135億円)を突破する大ヒットとなっている。

英BBCは、ハリウッドでの〝アジアの時代〟は相当遅れたとしながらも、韓国のポン・ジュノ監督によるダークで風刺的な「パラサイト 半地下の家族」(19年)や、リー・アイザック・チョン監督の「ミナリ」(20年)のオスカーでの成功以来、それは確かに構築されてきたと伝えた。

昨年は「エブエブ」で、今年はインドの英植民地時代を舞台にした叙事詩的作品「RRR」も話題になったとし、動画配信サービスでは韓国の「イカゲーム」や、米国の韓国系移民を描いたドラマ「パチンコ」などの世界的ヒットも〝アジアの時代〟の起爆剤となったとBBCは評価。

「ハリウッドはついに世界の他の地域に追いつきつつある」と、毎年100本以上の新作映画を見るシンガポールの映画愛好家ダイアナ・オスマン氏の見方を紹介した。

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