注目ポイント
中国系動画投稿アプリ「TikTok」の使用禁止をめぐる動きが米国やカナダ、欧州連合(EU)で加速している。なぜ、TikTokが規制対象なのか、米紙ニューヨーク・タイムズがその理由を解説した。
バイデン米政権は先週、中国系動画投稿アプリ「TikTok」など、外国の通信技術の禁止権限を米政府に与える新たな法案を支持すると表明した。全米だけでも1億人を超える利用者に影響を与えるため、慎重論もあったが、政権側も支持する姿勢を明確にしたことで、TikTokの法規制に向けた議会での審議が加速しそうだ。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は声明で、「外国政府が米国内で提供されている技術サービスを使って米国人の機密データや国家安全保障を危険にさらすことを防げる」と賛同する方針を発表した。
問題の法案は、米議会上院の与野党議員12人が7日提出した。成立には上下両院の本会議での可決と、バイデン大統領の署名が必要となる。下院本会議では月内にも採決する可能性が出ている。実現するかは不透明だが、中国当局の情報収集への警戒感が規制機運を高めている。
上院民主党のウォーナー氏は米メディアに対し、TikTokは「米国人のデータを安全に保管せず奪っている」と批判。野党共和党の議員とともに法案を提出する方針を明らかにした。バイデン政権は既に連邦政府の端末からTikTokアプリを削除するよう指示している。これらの動きについて、ニューヨーク・タイムズ紙が解説する。

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米政府がTikTokを禁止するのはなぜか?
それは中国だからだ。
欧米の議員や規制当局者は、TikTokとその親会社である中国のIT企業ByteDanceがユーザーの位置情報などを含めた機密情報を中国政府に提供することを懸念している。中国では政府が情報収集活動のため、自国企業や国民から秘密裏にデータを求めることが法的に可能で、中国当局がTikTokのおすすめに誤情報を情報操作に利用するのではないかというのだ。
タイムズ紙によると、TikTok側はこれまでそのような主張を否定しており、ByteDanceから距離を置こうとしてきた。
TikTokを禁止している国は?
インドが2020年に同プラットフォームを禁止したことで、ByteDanceは世界最大級の市場を失った。インド政府は中国人が所有する59のアプリについて調査し、ユーザーデータを国外サーバーに密かに送信していたことを突き止めたとしている。
米国での状況
昨年11月以降、20以上の州が公共機器のTikTok使用を禁止。テキサス大学オースティン校、オーバーン大学、ボイシ州立大学など多くの大学がキャンパスのWIFI環境からTikTokをブロックしている。陸軍、海兵隊、空軍、沿岸警備隊では3年前に禁止。だが、個人使用は例外だ。また、大学でもWIFI接続を無効にし、セルラーデータに切り替えれば、同アプリを使用できる。