注目ポイント
「芝居は人生の如く、人生は芝居の如し」と言われる。ドラマを通して私たちは共感し、登場人物に自分の姿を重ねる。ひとつの国の文化や時代もドラマを通して表現できる。 台湾のはさまざまなプラットフォームを通して海外でも見られるようになり、この土地の物語を世界へと伝えている。
曾瀚賢は、海外へ輸出するドラマであっても、どの土地に立って制作するかが非常に大切だと考えている。
『誰是被害者(次の被害者)』は、瀚草がローカルの物語をグローバルな手法で表現した作品だ。アスペルガー症候群の鑑識官が、失踪した娘が関係していた殺人事件を捜査していく過程で、スクープを得るためなら手段を択ばないジャーナリストと協力していく物語で、二人は一つひとつの奇妙な事件の真相に迫っていく。一般の刑事ものが犯人捜しをしていくのと違い、このドラマは台湾でかつて発生した重大事件を巧妙に取り入れ、一つひとつ謎を解きながら真の被害者を明らかにしていく。
物語が進むにつれ、被害者は実は殺人犯である可能性が見えてくる。登場人物一人ひとりのもろさや心の傷が浮き彫りになり、分ってほしいと渇望する視聴者は共感する。
『誰是被害者』は、善人と悪人といった二分法ではなく、広い視野で社会に光を当てた。新鮮な物語の展開の中に、人間性の善と光が見え隠れする。『誰是被害者』は台湾のNetflixのランキングで連続10日以上トップに立ち、ベトナムやシンガポール、香港などでもトップ10に入り、セカンドシーズンの制作が始まる前から、Netflixは契約続行を決めた。これは台湾ドラマにとって大きな励みになる実績と言える。
曾瀚賢は、多様性を受け入れる台湾ではコンテンツ産業に対しても受容度が高く、従来とは別の視点を提供するというのが台湾ドラマの特色になっていると考える。台湾文化は大きな影響力を持ってはいないが、ルールを定めて大きな声を上げることはできる。「しかし、それよりも最も質が高く、味わい深く、人々の共鳴を得られる声を出していくべきだと思います」と言う。

『茶金』が打ち出す新たな美
2021年、公共テレビと瀚草が歴史ドラマ『茶金 ゴールドリーフ』を共同制作した。1950年代台湾の政治や経済、不安定な国際情勢の中で、台湾茶が世界市場で最も輝いた時代を描いたものだ。女性商人がいなかった時代にヒロインが茶葉の商戦に加わっていく。さらに茶農家や茶師といった市井の人々の生活も描かれ、一つの時代の歴史を見せてくれるドラマだ。
湯昇栄によると、以前の時代物は時間をかけて感情表現するものが多かったが、『茶金』はテンポが速く、男女の恋愛もメインではない。ただビジネス戦のプロセスで主人公の男女が想いを抱き合い、慕い合うだけに留まる。富豪の家の典雅で堂々としたシーンや、ヒロインのたおやかで品のある着こなし、茶を嗜む文化、台湾の茶園の壮大な景観などが詳細に表現される。古い時代の物語だが、現代的なビジュアル表現がこれまでの台湾ドラマとは異なる美を醸し出した。「私たちは新しい映像言語を生み出し、ローカルな素材に新たな高みをもたらしたかったのです」と『茶金』をプロデュースした湯昇栄は言う。

多様な内容が台湾の価値を伝える
