2023-03-10 政治・国際

4月に蔡総統が訪米し、下院議長と会談か 中国は台米当局者の往来「断固反対する」

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注目ポイント

中国外務省の毛寧副報道局長は8日の記者会見で、蔡英文総統が4月に訪米し、マッカーシー米下院議長と会談する方向で調整しているとの報道に、「深刻な懸念」を表明。秦剛外相もその前日の記者会見で、台湾問題は米中関係にとって「越えてはならないレッドライン」と強調しており、毛氏は米国と台湾の当局者の往来に「断固として反対する」と語気を強めた。

英紙フィナンシャル・タイムズは7日、マッカーシー米下院議長が表明していた訪台を取り止め、代わりに蔡英文総統を含む政府高官が渡米し、カリフォルニアで会談すると伝えた。同紙によると、中国を挑発することを避けるため、蔡氏側の訪米に変更するようマッカーシー氏を説得したという。

これは、昨年8月、当時のペロシ米下院議長が台北を訪問した後、強く反発した中国が台湾周辺で実弾を使い、挑発的な軍事演習を行ったように、マッカーシー氏が訪台した場合、同様の事態が起きることを懸念したためだ。

米政治ニュースサイト「ザ・ディプロマット」によると、蔡総統は4月に台湾と外交関係のある中米の数か国を歴訪する途中、米国に立ち寄る予定だ。台湾総統の米国への公式訪問は、中国の強い反発を招くことが予想されるため、台湾が公式に外交関係のある国への訪問途中の米国でのストップオーバーは珍しくない。

蔡氏は2018年と19年に米国に立ち寄ったことがある。だが、蔡氏は24年5月に総統の任期を終えることから今年は実質上、在職最後の年であり、今回の米首脳との会談が意味することについて憶測が広まっている。

一部の報道では、蔡氏はニューヨーク州イサカにある名門コーネル大学を訪れ、1995年に故・李登輝総統が台湾と中国の政治的違いを強調した有名な演説を倣ったスピーチを行う可能性があるとしている。コーネル大学は、李氏が農業経済学で博士号を、蔡氏がロースクールで法学修士号を取得した大学でもある。

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台湾元総統・李登輝氏

李氏の「台湾の民主化経験」に関する演説は中国の怒りを買い、その年の後半に起きた第三次台湾海峡危機のきっかけになった。中国は演説後に軍事演習を開始し、翌年の総統選挙での李氏の再選を阻もうとしたが、失敗した。ザ・ディプロマットは、「蔡氏が李氏の後継者として政界入りしたことを考えると、その類似性は非常に象徴的だ」と表現した。

だが、マッカーシー氏に訪台しないよう促したのは蔡氏だったという点は重要だと同サイトは指摘。「李氏が1995年の演説で非難されたように、蔡氏は与党・民主進歩党(DPP)が故意に中国を挑発しているという国際的な認識を避けたいと考えているようだ」と伝えた。

そんな中、中国の秦剛外相は7日、北京で開催中の全国人民代表大会(全人代)で記者会見し、台湾は中国の「核心的利益の中の核心だ」と強調。対抗姿勢を強める米国の対中政策は、「理性的で健全な軌道を完全に外れている」と非難。米国がブレーキをかけなければ「衝突に陥るのは避けられない」と警告していた。

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