2023-03-08 政治・国際

激戦続く要衝バフムトでワグネルが露軍に不満 「弾薬供給されず、軍司令部へも立ち入り禁止」

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注目ポイント

ウクライナのシルスキー陸軍司令官は今週、ロシア軍の攻勢で激戦となっている東部ドネツク州の要衝バフムトでの戦闘が、これまでで「最も緊迫した局面」を迎えていると警戒感を示した。一方、最前線に多くの戦闘員を送っているロシアの民間軍事会社「ワグネル」のトップは、露軍からの銃弾の補給がなく、軍司令部との面会も拒否されるなど、両者の溝がさらに深まったことを明らかにした。

市内の3方をロシア側に囲まれたバフムトからウクライナ軍が撤退を始めているとの情報も出る中、米国のオースティン国防長官は6日、バフムトは「戦略や作戦上の価値というよりも、象徴的な意味が大きい場所だ」と述べ、もし陥落したとしても戦況を大きく左右はしないとの考えを示した。

だが、ゼレンスキー大統領は同日、軍のザルジニー総司令官や国防省幹部と会合を開き、防衛を維持、強化する方針を確認。米シンクタンクは軍が限定的撤退を始めた可能性が高いと指摘したが、ウクライナ側は、徹底抗戦の姿勢を改めて強調。ウクライナ部隊の幹部は撤退観測を否定し、「防衛維持のため新しい兵員が入ってきている」とした上で、西方への補給路である主要道も維持していると主張した。

ゼレンスキー大統領はビデオ声明で「最も困難な戦い」としながらも、兵士らの「不屈の精神」をたたえた。

また、国境警備隊の現地部隊のナザレンコ副隊長は、バフムト攻防について「敵は弱点を探り、戦術を組み合わせて揺さぶっているが失敗している」と主張。「完全な地獄だが、防御できている」と述べ、ウクライナ側に戦術的変更はないことを示した。

米シンクタンク「戦争研究所」は5日、ウクライナ軍がバフムト市東部から限定的な戦略的撤退を始めている可能性が高いとの分析を発表。完全撤退するかどうかの判断は時期尚早だとも指摘した。

一方、ロシアメディアは、ロシア軍と民間軍事会社ワグネルの部隊は、西側の一部を残してバフムトをほぼ包囲したと報じた。だが、ワグネルの創設者プリゴジン氏は6日、同社の戦闘員が弾薬を供給されておらず、ワグネル側の代表がウクライナ東部にある露軍司令部に弾薬補充を求めたところ、「司令部への立ち入りを禁止された」と不満を示し、指摘されてきたワグネルと露軍上層部との対立の深まりを改めて示唆した。

プリゴジン氏は5日に動画を公開し、その中で戦闘服姿の同氏はワグネル戦闘員らの弾薬がロシア軍に奪われているという不満を繰り返し表明。「ワグネルが今、バフムトから撤退すれば、戦線全体が崩壊する」とし、ロシアの利益を守る軍隊の編成全てにとって状況は厳しくなるだろうと警告した。

さらにプリゴジン氏は動画の中で、ロシアが戦争に負けた場合、政府にスケープゴートにされることをワグネルの部隊が懸念しているとも語った。動画はプリゴジン氏のニュースを発信し、ワグネルと提携しているロシアのSNS「テレグラム」のチャンネルで公開された。

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