注目ポイント
国連で1948年に採択された世界人権宣言は、第2次世界大戦の惨禍を決して繰り返さないとの強い願いから生まれた。採択75年の節目を前に、この画期的な宣言が採択に至る経緯を振り返り、現代にも通用するのかを取材した。
例えば、子どもの権利委員会他のサイトへは最近、子どもの権利条約の実施状況を7カ国で調査し、アゼルバイジャンにおける体罰やボリビアにおける少女への性的暴力などに深刻な懸念を表明した。また、各国には国連勧告の履行状況に関する報告が求められる。直近では、特別報告者がジンバブエの大統領に対し、市民運動と結社の自由を厳しく制限する恐れのある法案を却下するよう強く求めた他のサイトへ。
これらの機関や専門家は、ジュネーブで年に少なくとも3回開催される人権理事会で報告を行う。
世界人権宣言の見直しは必要か?
ピレイ氏は「先住民族の権利、女性の権利、子どもの権利など、これまで十分に確立されていなかった権利を詳しく規定するためアップデートする必要がある」と示唆するが、「それを除けば、基準としての世界人権宣言に最大限の信頼を寄せている。宣言の掲げる原則に異論を挟むことはできない」と述べる。
リンチ氏は、宣言には見直しよりも執行が必要だと話す。人権を侵害する国家や非国家主体に説明責任を課すメカニズムだ。それには人権を定める憲法や国内法、独立の裁判所、「活発で独立した市民社会と人権の擁護者」が欠かせないという。
現人権高等弁務官のトゥルク氏は、世界人権宣言を「過去の遺物」ではなく、現在と未来の問題に答えを示す、今も有効な根本原則とみなすべきだと話す。
昨年12月、75年前に起草された宣言を変えるつもりかと記者会見他のサイトへで問われたトゥルク氏は、現在の懸念を踏まえて解釈してもらうよう訴えていくと答えた。「今日のすべての指導者にこう伝えたい。世界人権宣言を読み、活用し、行動する義務と考えてほしい」
編集:Imogen Foulkes、英語からの翻訳:江藤真理
この記事は「SWI swissinfo.ch 日本語版」の許可を得て掲載しております