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台湾における米国の代表機関、米在台協会(AIT)は先週、協会トップであるワシントン本部の次期会長に、国家安全保障会議(NSC)の前中国担当上級部長ローラ・ローゼンバーガー氏が就任すると発表した。ジェームズ・モリアーティ現会長が20日に退任した後、就任する。最近までバイデン政権で対中政策立案の中枢を担った同氏を充てることで、台米関係強化を図る狙いだ。
米国は中国との国交正常化に伴う台湾との断交後、1979年に大使館に代わり米在台協会(AIT)を開設。台北事務所の所長が事実上の大使の役割を果たしている。ロイター通信によると、ワシントン本部の会長職は儀礼的な側面が強かったが、今回ローゼンバーガー氏を据えて、AITの役割を強化する。同氏は、バイデン政権の中でも対中国政策のタカ派として知られる。
AITは1日発表した文書の中で、「AIT会長としてローゼンバーガー氏は、台湾に関する政策レベルの議論に加わり、政権を代表して訪台し、米国での台湾代表者との会合に出席する」とした。
ロイター通信は、バイデン政権の方針に詳しい4人の関係者からの情報として、ローゼンバーガー氏は、前任者2人よりも台湾との非公式な関係に実践的なアプローチを取り入れるだろうと伝えた。その上で、同氏に与えられた任務の主な焦点は、台中間の緊張が高まる可能性が指摘される、来年初頭の台湾総統選に出馬する候補者との対話のチャンネルを維持することだという。
台湾海峡の軍事的緊張は昨年、米国のペロシ下院議長(当時)が訪台したことで中国側の怒りを買い、一気に高まった。さらに、ペロシ氏に続き、今年後半の訪台を表明したマッカーシー下院議長がそれを実行した場合、総統選でのリスクはさらに高まるとみられる。
総統選には、台湾の主権を強く支持し、中国から警戒される与党・民主進歩党(DPP)主席である頼清徳副総統の出馬が予想される。同党の蔡英文総統は、憲法上の任期制限により再出馬できない。一方、最大野党の国民党(KMT)は、伝統的に中国との緊密な関係を支持しているが、親中であることは強く否定している。
ある情報筋はローゼンバーガー氏の任命について、「意図的な戦略ではある」としたが、それは総統選挙で特定の候補を支援することではなく、「米政府の考えを伝えることだ」と述べた。
複数の情報筋によると、ローゼンバーガー氏のもう一つの重要な任務は、台湾国防省の理解を得て、米国側が求める防衛戦略を推し進めることだ。米政府は台湾が求める米国製の重戦車や戦闘機ではなく、機雷や対空・対艦ミサイルに焦点を当てた「非対称戦力」による防衛戦略の強化が急務だと強調している。
米軍事アナリストは、中国による最初の攻撃で軍用機と戦車が破壊される可能性があると警告。情報筋も「できることが多ければ多いほど、迅速に対応できればできるほど、台湾自身の防衛能力が向上し、それはもちろん、米国の政策の観点からも非常に優先度が高い」と指摘した。