2023-03-05 政治・国際

EUの教育助成事業から締め出されたスイス、新たなパートナー探しに奔走

© ベルン大学社会科学部 Keystone / Peter Klaunzer

注目ポイント

2021年5月の欧州連合(EU)との枠組み条約協議の打切りにより、スイスはEUの主要な教育助成プログラムのメンバー国から除外された。欧州諸国の大学間コンソーシアムを推進する「欧州大学イニシアチブ」に活路を求めるスイスの大学だが、EUの研究開発支援プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」や留学支援プログラム「エラスムス+(エラスムス・プラス)」におけるメンバー国としての地位には及ばない。

ベルン大学は、最近コンソーシアムに相次いで加わったスイスの大学のひとつだ。昨年12月1日、ヘント大学(ベルギー)からブラチスラバ大学(スロバキア)まで研究重視の総合大学9校から成る「エンライト他のサイトへ」に加入他のサイトへした。

ベルン大学で開発担当副学長を務めるヴァージニア・リヒター氏はswissinfo.chの取材に対し電子メールで、「エンライトへの参加はベルン大学にとって、目まぐるしく変化する欧州の高等教育環境で活発な活動を続ける好機だ。メンバーの地位は、わが校が今後発展する新たな原動力になる」と述べた。

このように、スイスの大学は欧州の教育・研究環境でその地位を維持しようと奮闘している。

スイスはEUの加盟国ではないが、伝統的に教育・研究・イノベーションの分野で協力してきた。スイスは2021年、EUとの過去数十年にわたる120以上の二国間協定に代わる包括的な条約を策定する交渉を破棄。EUはこれを受け、7年間で950億フラン(約12兆4千億円、2021年当時)の予算規模を持つ世界最大の研究助成プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」において、スイスの地位をそれまでの「準加盟国(アソシエイト)パートナー」から「非加盟第三国」に降格させた。これにより、スイスは一部の助成金の受給が制限される。スイス当局が暫定的な助成を行ってはいるが、それでもスイス教育・研究界にとって大きな打撃だ。

さらに、2014年には、交換留学制度をはじめとするEUの教育・交流プログラム「エラスムス・プラス」で、スイスはメンバー国からパートナー国に降格された。スイスで同年実施された国民投票でEUからの移民を制限する法案が可決され、EU・スイス間の学生・研究者の交流に問題が生じたためだ。

EUもうひとつの旗艦プロジェクト

EUは2022年、スイスの大学にEUのもうひとつの旗艦プロジェクト「欧州大学イニシアチブ他のサイトへ」(現在はエラスムス・プラスに含まれる)にアソシエイト・パートナーとしての参加を認めた。

2018年に創設された同プロジェクトは非常に人気が高い。互いに提携し、組織レベルの協力を強化するよう、欧州各地の大学グループに奨励する。

コンソーシアムのひとつの実例として、学生はコンソーシアムに参加する複数の大学での研究を組み合わせて単位を取得できる。また、欧州大学イニシアチブはイノベーションや起業家精神教育、教育と研究の連携を支援する。欧州高等教育の国際競争力を、米中に対し長期的に高めるのが狙いだ。

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