注目ポイント
米政府はこのほど台湾に対して6億1900万ドル(約840億円)もの武器売却を承認し、議会に通知した。中国の軍備が増強されるなか、台湾軍の防衛能力を高める狙いだ。同時に来年1月には総統選をひかえ、かつ「米国は最終的に台湾を見捨てるのではないか」という米国への不信感にもとづく「疑米論」が浮上する台湾社会に対し、「台湾海峡の平和と安定」を重視する米国を強く印象付けたい意図も垣間見られる。
こうした情勢を反映して、バイデン政権は22年暮れに成立した2023会計年度(22年10月~23年9月)の国防予算の大枠を決める国防権限法で、台湾の武器調達や軍事演習の支援などに5年で最大100億ドルを充てることを決めている。
さらに、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは2月23日、米軍が台湾軍の訓練を支援するため、今後数カ月以内に台湾に派遣する部隊を従来の約30人から100~200人に引き上げる計画だと報じた。折しも当の台湾では、「米国を当てにしても、結局は見棄てられるのではないか」と、米国に対する不信感をあらわにした「疑美論」(疑米論=美国とは中国語で米国を意味する)が浮上しており、米国は、中国による認知領域での工作などの疑念も念頭に、台湾に対してこうした疑念を打ち消す強い姿勢を示す必要にも迫られていた。米政府は物的支援に加え、人的な面でも台湾を軍事支援していく構えだ。
中国はここ20年の経済発展で、急速に軍事力を増強してきた。22年版防衛白書によると、22年度の中国の国防費は台湾の17倍と圧倒し、中台の軍事バランスは中国に大きく傾いている。米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIC)」は1月、中国軍が26年に台湾への上陸侵攻を図ると想定した机上演習(ウオーゲーム)を実施したが、大半のシナリオで中国軍は台湾制圧に失敗するものの、米軍や自衛隊も多数の艦船や航空機を失うなど大きな損失を出すとの結果となった。
米国の台湾支援の負担は大きくなる一方だが、反中感情の高まりで台湾への支援には党派を超えた支持があり、米中台のせめぎ合いは激しさを増しそうだ。
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