2023-03-02 政治・国際

生産国にもチョコレートの利益を カカオ豆加工に力を入れるコートジボワール

注目ポイント

シリーズ アフリカから見るカカオ、 エピソード 5 カカオ豆の生産、輸出はコートジボワールの主要産業だが、利益は少ない上に不安定だ。政府は加工部門を強化し、チョコレート産業から安定した利益を国にもたらそうとしている。

何十年もの間、西アフリカのカカオ生産者は世界最大のチョコレート製造圏である欧州に、チョコレート産業の利益のほとんどが吸い上げられていくのを黙って見ていた。米調査会社グランドビューリサーチの報告によると、世界のチョコレートの市場規模が1130億ドル(約15兆4千億円)だった2021年、欧州のシェアは47%と圧倒的だった。

アフリカ諸国がバリューチェーンを高め、利益を大きくしようと戦っているのは不思議ではない。カカオの生豆を生産、輸出するだけではなく、より利益率の高い加工部門に目を向け豆を焙煎、摩砕(まさい)し、チョコレートを作るのに必要なココアパウダー、カカオマス、固形物(ココアケーキ)、ココアバターなど加工品の生産を目指している。

コートジボワールは世界のカカオ豆の生産量の約43%を占める世界最大のカカオ豆生産国。同国がこの加工品製造路線の旗振り役だ。

生産地での加工

コートジボワール政府は国内の加工能力を押し上げるため、民間企業に対し以前から優遇措置をとってきたが、2020年、アラサン・ワタラ大統領は新たに、2025年までにコートジボワール産のカカオ豆すべてを国内加工できる体制を目指す方針を打ち出した。この期限は後に2030年に延期されたが、現在の国内加工率が約33%であることを考えれば非常に意欲的な目標だ。また、外資加工業者の進出が進む中、政府はカカオ加工施設への国家予算の割り当てを増やす決定を下した。

国際ココア機関(ICCO)によると、2021/22カカオ収穫年度(2021年10月~22年9月)のコートジボワールのカカオの加工量はわずか67万5千トンで、収穫量210万トンの3分の1にとどまった。残りの140万トンは生豆のまま主にマレーシアやオランダに輸出され、そこで加工後、メーカーに卸された。

欧州のチョコレートメーカーに対し、エシカルかつ持続可能な方法で原料を調達するよう圧力が強まっていることを考えれば、コートジボワールが加工能力の増強に重点を置いたのは先を見抜いて判断する力があったと言えるかもしれない。

キットカットやSmartiesなどで知られたスイスの食品大手ネスレは、カカオ加工品をカカオ豆の生産地の近くで購入すれば、チョコレートメーカーは原材料元を追跡するのが容易になる、と話す。

ネスレの広報担当者はswissinfo.chに対し「原産国での摩砕能力の向上は、カカオ豆のサプライチェーンにおけるの透明性やトレーサビリティーの向上を促し、原産国の付加価値を高めると考えている」と語った。

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