注目ポイント
台湾人女性と結婚し、長年台湾在住ライターとして活躍してきた広橋賢蔵氏がこのほど台湾で帰化申請し、晴れて『新台湾人』となった。同じような決断をした隣人たちにも興味を持ってインタビューしてみると、そこにはモラハラやDVに苦しめられた台湾人夫との離婚調停を互角に戦うために、敢えて帰化申請に踏み切ったという信じがたい事例も浮上…、驚愕の最終回だ。
台湾で帰化した日本人熟年女子会に潜入
これまで筆者は主に台湾での自分の帰化手続き体験を皆さんにお示ししてきたのだが、周囲の人たちのなかにも同様の決断をした方は少なからずおり、その帰化申請の顛末も大変気になる。そんな訳で、そういう周囲の人たちとは機会があればSNSなどで情報交換をしてきた。つい先日、台湾在住20年以上で台湾人配偶者を持つ日本人女性3人と話す機会があった。
ご想像に違わず、女3人寄ればなんとやらで、それぞれの家庭がかかえる文化摩擦の分析や、あつれきの考察(早い話がグチ!)も出るなど、たいへん興味深い話が次々に飛び出した。3人とは、昨年末に無事身分証をゲットしたHさん、続いて筆者を帰化する気にさせた張本人のSさん、そして今回の主人公、20年以上前に日本から台湾にお嫁に来たYさんである。
無事帰化申請が認められた3人の中でも、日台混血のわが子の育児に奮闘してきたあげく、帰化に至ったYさんの申請理由は出色だった。
「夫との離婚を進めたい。だが自分の当然の権利を勝ち取るためには、外国人の身分ではかなわない」という考えに基づき、台湾での帰化を強く決心した、というのだ。
日本人女性は皆「おしん」の扱い⁇
Yさんの帰化決断の経緯を詳しく説明するとこうだ。
家庭内でモラルハラスメント(モラハラ)、家庭内暴力(DV)行為を繰り返す非常に専制的な夫と、夫の一族にはもうガマンの限界だ。2人の娘も成長したことだし、思い切ってここで立ち上がろう。だが、台湾人の身分でなければ、離婚調停で争いになった際に、外国人である自分に状況は不利に働き、法的に正当な慰謝料などを求められなくなる可能性が高い。ならば、いっそ帰化申請をして、それが認められてから本格的に離婚を申し出てやろう…、という数年がかりの壮大な計画で帰化申請実行に踏み切ったのだという。
そのYさんのご本人の声に耳を傾けてみよう。
台湾をよく知る方にとっては「ある、ある」と思わせる部分も満載だ。
「私の夫は、日本人女性は全て『おしん』(いわずと知れたNHKの伝説の朝ドラ。90年代初頭に台湾でも放送され大ヒットした)同様だと思って、日本人妻は何でもいうことを聞くと勘違いしていたの。しかも姉が2人いる末っ子長男でしょ、昔かたぎの男尊女卑家庭の中で、かなり大事にされ、甘やかされていたみたい」
1992年、米国での語学留学を機に現地で知合い、付き合うことになったが、その後、妊娠をしたので結婚を決めた。牧師がサインするだけでウェディングドレスも着ない簡略なものだったという。