2023-02-28 政治・国際

トルコ地震、欠陥建物大量崩壊で捜査本格化 「政府は業者だけの責任にするな」の声も

© Photo Credit: GettyImages 被災地を視察するエルドアン大統領

注目ポイント

5万人以上が犠牲になったトルコ・シリア大地震からすでに3週間。トルコの被災地では仮設住宅としてコンテナの設置が急ピッチで進み、一部で既に入居も始まった。ただ、避難生活を強いられる住民は国内で190万人を超えている。一方、甚大な被害をもたらしたずさんな建築を請け負った業者への捜査が本格化する中、欠陥を黙認した政府の責任を追及する声も高まっている。

トルコ災害緊急事態対策庁は、被災地で既に倒壊したか、激しく損傷した建物が17万3000棟以上あるとしている。トルコ政府とシリア人権監視団(英国)の集計によると、トルコとシリア両国で確認された死者はすでに5万人を超えている。

トルコの土木技術者会議所のジェマル・ゴクチェ元会長は、エルドアン政権と与党・公正発展党が、都市において地震被害を拡大させるような緩い規制環境を助長していると批判。「政府は責任を技術者や建築家に押し付けることで、責任を回避しようとしている。しかし、主犯人は政府。公益よりも利益を優先しているからだ」と訴えた。

この数週間にわたり被災地を視察したエルドアン大統領は、地震への備えを改善すべきだと認識した様子だ。国民に向け、同氏は先週、「この災害から学ぶべき教訓がある」とし、「過去の経験に照らして、欠点を取り除き、強みを強化することが非常に重要だ」と述べた。

そんな中、新たな事実も判明した。マグニチュード(M)7.8~7.5だった今回の大地震では、活断層によって地表が最大約9.1メートルずれたことが、日本の産業技術総合研究所による分析で分かった。

地震後に撮影した航空写真を分析。日本の観測史上最大の内陸地震で、1891年に岐阜県などを襲った濃尾地震(M8.0)の約8メートルを超える。近藤久雄主任研究員(古地震学)は「内陸の地震での水平方向のずれとしては、世界最大級だろう」としている。

M7・8は6日未明、北東部から地中海に伸びる東アナトリア断層で起き、9時間後、この断層から分岐する別の活断層でM7.5が発生した。

トルコの政府機関が公開した航空写真から道路のずれなどを分析したところ、M7.5の震源真上周辺で9.1メートルのずれを確認した。作業は完了していないため、もっと大きなずれが見つかる可能性もある。M7.8の東アナトリア断層付近では、震源真上の北東約50キロで7.7メートルのずれも見つかっている。


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