注目ポイント
5万人以上が犠牲になったトルコ・シリア大地震からすでに3週間。トルコの被災地では仮設住宅としてコンテナの設置が急ピッチで進み、一部で既に入居も始まった。ただ、避難生活を強いられる住民は国内で190万人を超えている。一方、甚大な被害をもたらしたずさんな建築を請け負った業者への捜査が本格化する中、欠陥を黙認した政府の責任を追及する声も高まっている。
トルコ政府は2か月で10万基のコンテナ設置を目標に掲げ、130か所で仮設住宅の建設を進めている。南部ガジアンテプ県では「コンテナの町」の整備が進み、計1万9000人が暮らせる予定だ。オケシュ・オネキさん(58)は最初に入居できたグループの1人。「狭いけど、テント生活の何百倍もぜいたくだ。安心した」と安堵感を示した。
一方、トルコ・シリア大地震で、トルコの被災地では安全対策をおろそかにしたずさんな建築やそれを認めた行政への非難が収まらない。震源地から離れ、倒壊被害も比較的少なかった南部アダナ。複数のマンションが立ち並ぶ一角で、1棟だけ崩壊した場所がある。「周りは無事だった。なぜここだけ」。親族を亡くした女性は施工業者らに怒りをあらわにした。
14階建てマンションがあった場所は、がれきが撤去され更地になっていた。周囲の棟は残り、そこだけが異様な空間だ。周辺住民は、崩壊した1棟は築20年前後で他の棟と差はなかったとした上で、1階部分を事業所に改築する際に支柱を取り除く工事が行われていたと証言した。
甥一家4人を亡くしたファディメ・バイドゥルさん(66)は「もし(支柱のことを)知っていたら住まなかっただろう。黙っていた施工業者は詐欺師だ」と非難した。地元メディアによると、この現場では100人前後が死亡。当局は施工業者の責任を問う方針だ。
トルコの建設業界の専門家は米紙ニューヨーク・タイムズに、倒壊した欠陥建造物については請負業者が罰せられるのは当然だとした上で、業者だけを標的にすることは、建物の安全性をうたったシステムの中で、何千人もの命を奪った重大な過失を覆い隠すことにつながると警告した。
過去10年、請負業者は自社が手掛けた建物の検査に、どの会社に委託するかを自由に選ぶことができた。そのことが、「違法な商取引」につながったと政府は結論付けた。トルコで1999年に起きた壊滅的な地震で崩壊した建物を調査した元州検察官のアリ・オズグンドゥズ氏は、「請負業者だけに責任を負わせることは簡単なことだ」と述べた。
トルコのボズダー法相は先週末、建物倒壊の責任を追及する捜査で、これまでに180人以上の関係者を逮捕したと明らかにした。ボズダー氏は捜査について、600人以上を対象に行っていると述べた。南部ガジアンテプ県の自治体当局者も逮捕され、建築の監督責任を問われたとみられる。同国では被災10県で、「地震犯罪捜査事務所」が設置されている。