2023-02-27 政治・国際

ロシア中銀資産 ウクライナ復興資金としてスイスは没収できるか?

© Photo Credit: GettyImages

注目ポイント

ウクライナの復興資金に充てるため、凍結したロシア中央銀行の資産を没収する案を巡り、欧州で活発な協議が進んでいる。没収案には賛否両論あり、実現にはスイスを含む各国で多くの法的問題をクリアする必要がある。

ウクライナ侵攻が始まって以来、各国でロシア中央銀行の資産が凍結されている。欧州理事会のシャルル・ミシェル議長は欧州連合(EU)加盟国に対し、この凍結資産を収益性のある運用可能なファンドに移管し、収益金をウクライナの復興資金に充てるべきだと強く主張している。

フィナンシャル・タイムズ紙に対し、「これは正義と公正の問題」であり、「法的な原則に則って行うべきことは明らかだ」と語った。

加盟国の中には、外国資産を没収するための法的根拠を欠く点だけではなく、国際金融が不安定になるリスクを懸念する国もある。EU当局はこうした懸念に応えるべく、いかなる措置も同盟国と共同で行うと確約し協力を呼びかけた。

同盟国にはスイスも含まれている。スイスでは政府の作業部会が「法的に正当な出所の資金を没収するのは違法」とする結論を出したばかりだ。だが国際議論ではロシアの凍結資金や外国の国家資産を没収する選択肢が依然として争点になっており、スイス政府も注視していくと述べている。

なぜロシア中銀資産に関心が集まるのか?

ウクライナはロシアに制裁措置を取る国に対し、ロシアの凍結資産をキーウに移してウクライナの復興資金をまかなうべきだと訴えている。これまでに注目が集まっていたオリガルヒ(新興財閥)の資産については、スイスも約75億フラン(約1兆850億円)を凍結した。今焦点になっているのは別の資産、つまりロシアが海外口座に保有し、侵攻直後に各国で凍結された約3千億ドル(約40兆4600億円)の外貨準備だ。

ウクライナのデニス・シュミハリ首相は昨秋、復興費用が7500億ドルに上ると見積もった。ロシアの資産は復興資金源として大きく貢献できる。

だがEUはまだ、域内で凍結された資金額を正確に把握しきれていない。ある推計では330億ユーロ(約4兆7190億円)に上るとされる。

各国で凍結された資産は合法的に没収できるのか?

現在EUやスイスには、政府に凍結したロシア資産の没収を認める法律はない。

ベルン大学経済法研究所のペーター・V・クンツ所長は、スイスは没収を可能にする連邦法を制定できると話す。だが、どのような法案もまず国民投票による有権者の承認が必要になる可能性があることも指摘する。

EBS大学(ドイツ・ヴィースバーデン)のマティアス・ゴールドマン教授は、EUが法的基盤を構築するのは比較的容易なはずだという。EU加盟27カ国は、例えば制裁措置を実行する超国家的権限の一環として、あるいは国際協定に基づいて、没収した資産を管理する信託機関を設立できるという。おそらく後者の可能性の方が高い。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい