2023-02-27 政治・国際

南アが露・中と海軍の合同軍事演習実施 ウクライナ侵攻めぐる3国それぞれの思惑

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注目ポイント

インド南部ベンガルールで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議は25日、閉幕した。ロシアのウクライナ侵攻を巡り、ロシア・中国と日欧米との間で意見が対立したことから共同声明の採択を見送り、議長国インドが代わりに議長総括を発表した。そんな中、南アフリカ沖では南アと中露3か国が、海上の合同軍事演習を実施している。

今回の演習は今月17~27日の日程で実施され、25~27日が最も活発な期間とされる。ロシアの第1チャンネルは、船舶を奪取した武装集団を兵士らが制圧する訓練の模様などを放送した。

一方、米ホワイトハウス報道官は1月、「ウクライナに残忍な戦争を仕掛けたロシアと合同で軍事演習に加わる国に対し、米国は懸念を抱いている」とコメントしていた。南アは、ロシアによるウクライナ侵攻への国連非難決議に棄権票を投じ、ロシアに対する経済制裁にも欧米と共同歩調を取ることを避けてきた。

また南ア政府が、西側の制裁対象になっているロシアのオリガルヒ(新興財閥)で大富豪のアレクセイ・モルダショフ氏が所有する豪華クルーザー「ノルド」が、ケープタウンに寄港することを許可したことから外交問題に発展した。(実際、ノルド号は同港に寄港しなかった)

さらに、制裁対象のロシアの貨物船「レディーR」が南アの軍港での荷下ろしを許可したことも新たな問題につながった。南ア政府は、貨物は弾薬で、遅延していたものだと釈明した。

南アフリカ国際問題研究所のエリザベス・シディロプロス所長は、南ア海軍の優先事項は、自国海域での漁業の保護と、インド洋での海賊対策だと指摘。「海賊行為など沖合での問題に対処する能力を得るには、他国と協力する必要がある」ことから合同演習に参加していると強調した。

では、ロシアと中国が合同演習から求めるものは何なのか。シディロプロス氏は、今回の演習で最も多くのものを得るのはロシアだと指摘。「ロシアにはまだ遠征できるだけの力があり、世界中に友好国が存在していることを示した」とし、「ロシアと対峙しているのは世界ではなく、西側だけということを強調したかった」と分析した。

英王立国際問題研究所のアレックス・ヴァインズ氏は、一方の中国は商船のために自国からアフリカへの航路を確保することが関心事項だとした上で、アフリカ東部からつながるインド洋での覇権を目指していると解説した。

「つまり海軍のプレゼンスを国際水域で示すこと。中国はすでに東アフリカ沿岸のジブチを海賊対策の海軍基地として使用しており、おそらく、さらに多くの基地建設をもくろんでいる」と付け加えた。


 

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