2023-02-27 政治・国際

南アが露・中と海軍の合同軍事演習実施 ウクライナ侵攻めぐる3国それぞれの思惑

© Photo Credit: GettyImages

注目ポイント

インド南部ベンガルールで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議は25日、閉幕した。ロシアのウクライナ侵攻を巡り、ロシア・中国と日欧米との間で意見が対立したことから共同声明の採択を見送り、議長国インドが代わりに議長総括を発表した。そんな中、南アフリカ沖では南アと中露3か国が、海上の合同軍事演習を実施している。

20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の議長国インドは25日、ロシアのウクライナ侵攻を非難する共同声明が採択されなかった理由について、中国とロシアが「地政学上の問題を扱うべきではない」と主張したためだと説明した。見送りは4回連続で、先進国と新興国が協調する枠組みとしてのG20は、形骸化が長引いてきた。

昨年11月のG20サミットは、各国の意見を併記した首脳宣言を採択し、今回のたたき台となった。首脳宣言と同様にウクライナ侵攻を「戦争」と表現するよう日米欧が主張したのに対し、ロシアや中国、議長国インドが別の表現を模索し、共同声明採択へ折り合いが付かなかった。

議長総括は「ほとんどのメンバーがウクライナでの戦争を強く非難した」と明記。G20サミットの首脳宣言から引用され、ロシアと中国を除く全てのメンバーにより合意されたと記した。この戦争が世界経済に悪影響を与えているとした。

会議の出席者や米財務省高官によると、日本はロシアを「最も強い言葉で非難した」。イエレン米財務長官は「ウクライナを支援し、ロシアの戦争遂行能力を制限する努力を倍増するよう関係者に求める」と訴えた。欧州からも非難が相次いだ。

ロシアのシルアノフ財務相とナビウリナ中銀総裁は欠席した。

そんな中、ロシア政府系テレビ「第1チャンネル」は25日、ロシアと中国、南アフリカの海軍による南ア沖での合同演習の様子を映像付きで報じた。

中露に新興5か国(BRICS)メンバーの南アを加えた海上演習の実施で、ウクライナ侵攻を非難する米欧をけん制する狙いがあるとみられる。

ウクライナ侵攻以前から中国とロシアの関係は明らかだが、南アに関しては「なぜ今、中露と合同軍事演習なのか」という疑問が浮上する。英BBCによると、南ア政府はウクライナ侵攻に対しては中立な立場を固持し、今回と同様の合同演習を、フランスや米国を含む他の国々も招待し、定期的に主催してきたことを強調した。

今回の演習に南ア国防軍は350人を動員。一方、ロシアは極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」を搭載したフリゲート艦アドミラル・ゴルシコフなどの艦隊を参加させている。

南アの安全保障研究所のデニス・レーヴァ氏は、「ウクライナで苦境に立たされる中、ロシアは軍事力が依然、屈強であることを示そうとしている」と推測。同研究所は、今後の演習については言及していないが、2019年に行われた同じ3か国による合同演習の際には、各国から1隻の軍艦に加え、燃料補給船と調査船の7隻が参加したと説明。その時の演習は、沿岸での火災や洪水に対処する訓練や、海賊から船舶を奪還するという想定で演習したという。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい