注目ポイント
台湾東北角の深澳支線は山と海に沿って走り、車窓からは美しい風景を楽しめる。
景観や建築、芸術管理、文化政策などを専門とする彼女は、学んだことを瑞芳で活かし、これまでに「黄金博物館」の館長を務め、また地元の人々とともに「山城美館」を開いた。最近は瑞芳の古い町並みにある運送業者の建物を買い取り、古い家屋に学堂と民宿を融合させた「新村芳書院」を開いた。
また、金瓜石出身の作家‧頼舒亜は9歳の時に一家で台北に引っ越したが、故郷が忘れられず、郷愁にかられてこの地に戻り、台北と金瓜石での二重生活をしている。それまで出版社に勤務していた彼女は、「水金九」でフィールドワークを開始し、文化史に関する文章を書いている。「故郷への思いが、私を前へと向かわせてくれる原動力になっています」と語る。

瑞芳、Sweet Home
「水金九」の人気観光地としては、以前は九份のみが注目されていたが、近年は周辺の金瓜石や水湳洞、八斗子なども人気が出始めている。2019年の中秋節に十三層遺址がライトアップされたのが大きなターニングポイントとなった。32年にわたって静かに眠っていた巨大な建築群が目を覚ましたのである。この時、放置されて荒れ果てていた産業遺跡が貴重な文化遺産であることに多くの人が気付いた。
3年前に八斗子の駅近くにオープンした「好好基地」も、以前は鉱区だった土地だ。ここを運営するカメラマンの何経泰と恋人の黄宥兪は、3年前、友人で地主である「栄隆鉱業」の子孫から、放置された空間の活性化に力を貸してくれないかと頼まれた。それまで台北で働いていた二人は2度にわたって瑞芳を訪れ、ここに文化芸術の展示空間を開くことにしたのである。
800坪もの敷地には、かつての鉱山の名残がある。敷地に面した山には坑口があり、以前の機械室を展示空間にしたため、天井には当時の鉄鉤がかかっている。こうした独特の空間に合わせ、彼らは初めての展覧会に写真家の張昭堂を招き、鉱山労働者をテーマとした展示を行なった。
百年の時が流れ、時代が変わる中、無数の人がこの土地を行き来してきた。しかし、瑞芳の台湾語の発音Sui-hongの音が、英語のSweet homeと似ているように、瑞芳は多くの人にとって美しい故郷である。この土地で人々は奮闘し、理想を追い求めてきた。外部の環境がどう変わろうと、人々の堅い意志と大地とともに刻む歴史は、過去も現在も変わらないのである。






転載元:台湾光華雑誌
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