注目ポイント
ウクライナ侵攻から1年。西側諸国によるロシアや支援国への制裁が一層強化される中、侵攻を正当化するプーチン大統領は米国との新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を表明。これまでロシアと一定の距離を置いていた中国も連携強化にかじを切る動きを見せ、中露首脳会談後の軍事支援も現実味を帯びてきた。“気球問題”による米中関係の悪化、米要人の相次ぐ台湾訪問などで台湾海峡の緊迫化も懸念され、民主主義陣営と権威主義陣営の対立が先鋭化している。
2月24日でロシアのウクライナ侵攻から1年となり、米露中の駆け引きが活発化している。米国は中国がロシアに軍事支援しないよう強くけん制しており、民主主義陣営対権威主義陣営の対立が先鋭化してきた。双方とも結束を固めようとさまざまな手を打ち出しており、戦闘は長期化する様相を見せている。
米国のバイデン大統領は20日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問した。「米国の揺るぎない支持と西側諸国の団結」(サリバン大統領補佐官)を演出する狙いで、極秘に隣国ポーランドを訪れて国境を越え、最後は鉄道に乗り換えて約10時間がかりでキーウ入りするという異例の旅程だった。
ポーランドの首都ワルシャワに戻って21日に行った演説では、「専制主義陣営は弱体化した。世界の民主主義国家は今日も明日も自由の番人であり続ける」とウクライナ支援のため西側諸国が結束する重要性を訴え、ロシアは勝利しないと言い切った。
主要7カ国(G7)の外相も21日、声明を発表し、ロシアに全ての軍隊をウクライナから無条件で即時撤退するよう要求。ロシアや支援国に対する制裁を強化する方針を確認した。
一方、ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ侵攻後初の議会上下両院への年次教書演説を行い、「戦争を始めたのは西側諸国だ。ロシアはそれを止めるために武力を行使している」と侵攻を正当化した。その上で、米国との新戦略兵器削減条約(新START)について、締結時と環境が一変したとして、条約から脱退はしないものの、「履行を停止する」と宣言した。
これを受け、ロシア議会上下院は22日、新STARTの履行義務を停止する法案を審議し、上下院とも可決した。米露の間で唯一残された核兵器削減の枠組みである新STARTは、2026年の期限切れ前に形骸化する見通しとなった。
この1年、欧米諸国から厳しい制裁を受けるロシアが頼りにしているのが中国だ。中国はこれまでロシアと一定の距離を置く姿勢を示し、軍事支援には応じていない。だが、中国外交トップの王毅・共産党政治局員が22日、モスクワを訪問してプーチン氏と会談するなど、中露の連携強化にかじを切る動きを見せている。
会談で、プーチン氏は「全てが前進し発展している。われわれは新境地に達している」と中露の蜜月ぶりを称賛。習近平・中国国家主席の訪露についても意見が交わされ、プーチン氏は「ロシア訪問を待っている」と期待感を表明した。