注目ポイント
スタートアップ企業ライフジェン(本社バーゼル)の目標は、患者や保険会社が薬に余分な支払いをしなくてよくなることだ。ギリシャ・フェルナンドCEO(最高経営責任者)(33)は、同社が開発した技術でこの目標を実現できると確信する。
契約書の様々な条件は無数にあるとフェルナンド氏は説明する。ライフジェンが収集した公的な薬品、医療機器の価格を決める協定書の数は世界一で、約2千種類にもなるという。
さらなる挑戦
ライフジェンは現在、重要な局面を迎えている。同社はこれまで、ポルトガル、スペイン、サウジアラビア、カナダなどの国で約15の保険者が400以上の「価値」を基準にした契約を実施するまでに発展した。さらに、製薬会社上位10社のうち8社もが同社のプラットフォームにアクセスするための年会費を支払っている。
最大の目標は、米国市場だ。米連邦政府が管轄するメディケア(高齢者向け公的医療保険)が製薬会社との直接価格交渉を行い、特定の医薬品について「最高公正価格(Maximum Fair Price)」を設定できるようになるためだ。価値を元にした価格設定はここで大きな役割を果たすことになると期待される。
現在バーゼルとニューヨークを行き来する生活を送るフェルナンド氏は、米国を「制覇」すればライフジェンは3~5年で利益を出せると考える。最大の難関は営業チームを組織する十分な資金の確保だ。同社はイスラエルのベンチャーキャピタル、エイムーン(aMoon)からの巨額出資により、約1千万ドル(約13億円)を調達した。ベンチャーキャピタルは、新型コロナウィルスによる投資ブーム後に失速する企業が多かったバイオテックに対し懸念を深めており、投資家の説得に奮闘中だという。
フェルナンド氏はまた、逼迫(ひっぱく)する医療制度と利益重視の企業との間の利害関係を調整しなければならない。
「医療業界では誰もが対立する利害関係にぶつかる。私たちは患者が医薬品を購入でき、医療のアクセスしやすくなるよう支援する仲介者だ。保険社と製薬会社の間に立つスイスのような存在だ」(フェルナンド氏)
編集:Virginie Mangin、英語からの翻訳:谷川絵理花
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