2023-02-20 政治・国際

偵察気球問題で露呈した中国の不協和音 米国務次官「習政権と軍に亀裂の可能性」

© Photo Credit: GettyImages Colin H. Kahl

注目ポイント

国防総省の高官は先週、米国上空に飛来した偵察気球の問題が表面化するまで、中国最高指導部はその気球の存在に気付いていなかった可能性が極めて高いと述べ、習近平国家主席と人民解放軍トップの間に亀裂が生じていると指摘した。

ブリンケン米国務長官は18日、ミュンヘン安全保障会議のため訪問中のドイツ・ミュンヘンで中国外交担当トップの王毅共産党政治局員と会談した。中国の偵察気球について、「二度と起きてはならない無責任な行為だ」と非難。王氏は気球撃墜について、「米国が武力の乱用で中米関係を損なったことを直視し解決する」よう求め、会談は非難の応酬となった。

気球問題が勃発して以降、両国の高官がこの問題について会談したのは初めて。

会談でブリンケン氏は偵察気球について、「これまで五大陸の40か国以上の上空に侵入した」と指摘。「中国との衝突を望んでおらず、新たな冷戦も模索していない」とも語り、対話を維持する考えを示した。

中国外務省によると、王氏は会談で気球問題について米側に厳正な立場を示し、対応を根本から改めるよう求めた。さらにミュンヘン会議に出席した王氏は、関連の場で、「気球は民間用で予定軌道を外れて米上空に入った」と改めて主張。ブリンケン氏は、王氏から「謝罪はなかった」とテレビのインタビューで明かした。

そんな中、米国のコリン・H・カール国防次官(政策担当)は17日、ニューヨーク・コロンビア大学で開かれた討論会で、習近平国家主席が自国の広範な高高度偵察気球活動について、おそらく認識していたが、特定の偵察気球については問題化するまで知らなかったと述べた。

気球問題が浮上したことで、ブリンケン氏は3日、その翌週に予定していた中国訪問を急きょ取りやめた。この訪中は米中の数年ぶりのハイレベル会談となるはずだった。カール氏と同様、多くの専門家は、習政権指導部は気球について知らなかったことは明らかで、軍部が偵察活動を主導していたとみている。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、カール氏は、「習氏は軍に問い質したのではないかと思う。軍側は怯み、言い訳をしたはずだ」と語った。その上で、「中国では政権と軍部の間に大きな分断がある。習近平氏は軍を信用していない」と続けた。タイムズ紙は、「習氏が軍に対して懐疑的」だとするカール氏の主張は、バイデン政権の中でも最も過激なコメントだと指摘した。

一方、バイデン大統領は16日、米軍戦闘機が撃墜した他の3つの飛行物体が、「現時点で中国と関連する証拠はない」と国民に向けて強調し、習氏との対話を継続する意向を示した。

カール氏は、「(中国側は)この状況で完全に赤っ恥をかいた。彼らは物事を軌道に戻したいはずだ」とし、米国も「成熟した会話ができる場を築きたい」と付け加えた。

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